「ごめんね、僕のわがままで、君をまきこんだ」


「いいの。……私もあなたのことが」


「大好きだよ。狂おしくて、苦しくて、でも、離れたくない」


酔ったふりして目を閉じた。


雨の中、傘に隠れて、重なった唇。


降り注ぐキスは雨のよう、そして、永遠。


誘ったのはたぶん私の方。


帰りたくないとずるくつぶやいたのも私。


欲しいなら今すぐに奪って、無言で煽ったのもこの私。


微かな香水、はじけたボタン、隠せない期待、暗闇の抱擁、ざわめく素肌、止まない律動。


「君は僕に何を期待する?」


この先何を望むというのか?


妻子あるあなたをあえて選ぶ理由は何だろう?


私はあなたから一体何をもらいたいのか?


この恋を選ぶことでそれは手に入れられるものなんだろうか?


誰かを傷つけることで得られるものが、はたして、幸せなことなのだろうか?


本当に欲しいものは、甘くけだるい無責任な偽りの楽園なのかもしれない。