私の片思いの相手で、ずっと憧れていた彼がつきあっていた彼女と別れた。


彼女の心変わりが原因らしい。


ひどく落ち込んでる彼がかわいそうで、慰めてあげたくて、彼に私の身も心も全てを捧げた。


彼の心がまだ彼女にあるとわかっていたけれど、それでもよかった。


それこそ彼の母親のように、何から何まで世話をして、彼が望むことをできるだけかなえてあげた。


「君がいてくれたから、仕事もなにもかもがんばれるようになった」


抱きしめられて、彼にありがとうといわれた時、本当に天にも昇る気持ちというものはこういうことなのかと、生まれてきてよかったと思った。


それなのに、どうしてなのだろう?


両想いの楽しい日々はすぐに終わりを告げた。


口調は優しいままだったけれど、私に指一本触れることもなくなり、彼は作り笑いさえ浮かべるようになった。


「…一緒にいても楽しくない?」


「ごめん。俺、好きな人がいるんだ。だから、別れてくれないか」


「(スキナヒトガデキタ?)」


「君には感謝してる。つらかった時、助けてくれて、優しくしてもらって…」


感謝?


そんなものいらない。


ただ愛して欲しい。


そこには愛などなかったの?


ほんの少しも愛されてなかった?



なんという悲劇!


彼はあなたに愛されることによって、失恋の痛手を癒し、さらに元気さとまた誰かを愛して幸せにしてやりたいという気持ちまで手に入れることができた。


男としての自信を回復した彼は、献身的に尽くしてくれるあなたではなくて、自分のほうが尽くしてみたいと思う女性に出会い、惹かれてしまったのだろう。