自分の価値を感じたくて、何度も好きでもない男性と不貞を繰り返した私。



毎回少し満たされた気分になるのは、
自分を求められた時だけ。


こんなことはやめなくてはいけない。


頭ではわかっていました。


だけどやっぱりやめられず、
ただただ状況と自分の承認欲求に流されるまま何ヶ月か経った頃、


ある男性に出会いました。


その人はサイト常連だった私でも初めて絡んだ人で、
深夜にぽつりと、ひとつのチャット部屋でひとりごとを呟いていました。


年齢はひとつ年下。


なんだか普段ここを利用している人達と違う雰囲気の人だなぁと思って声をかけました。


私は今でこそ年齢も重ね、落ち着いた生活をしているのでだいぶ興味も薄らぎましたが、
若い頃、とにかく音楽好きで、
自分でギターを弾いたり、ライブハウスに通ったりが日常でした。(病気になってからはライブハウスには一旦全く行けなくなりましたが)


彼のハンドルネームが音楽に関連するものだったので、


「はじめまして!その名前って〜のこと?」


と声をかけると、


「おっ、知ってるんだ?ここ、あんまり音楽詳しい人いないから嬉しい」


その日、そんな会話から話が弾み、
しばし彼とお話したあと、
彼はあっさりこれから家で仕事するからと言ってチャットから落ちました。


その日の数十分の会話で、


あ、なんかこの人、ほかの人と違う。


と強く感じたのを覚えています。


それから私は彼の事が気になって気になって、
いつの間にか毎日彼をなんとなく探すようになっていました。


こんな感情になったのは初めてで、



だけど彼はあれからなかなか現れてくれませんでした。


そんなふうに数日が過ぎた深夜、
とうとう彼を見つける事が出来、
幸運にもまた彼はひとりでいたのでそのチャット部屋に入りました。


「私のこと、覚えてる?」


と声をかけると、


「勿論覚えてるよ」


といった感じで返してくれたと思います。


しばし世間話や音楽の話をした後、
勇気を出して彼に直接の連絡を教えてくれないかと切り出しました。


自分からそんな事を言ったのは初めてで、ものすごくドキドキしたのを覚えています。


だけど、次にいつ会えるかわからないし、
もう会えないかもしれない。


それは嫌だなと、自然とそんな気持ちになっていました。


彼は最初戸惑ったような感じでしたが、



自分の連絡先を教えてくれました。



それから個人的にメールをするようになりましたが、
彼と私の住まいは1時間もかからない場所であったにも関わらず、


彼は会おうとは全く言ってきませんでした。


それでも毎日のようにメールはして、


彼は音楽を仕事にしているのだということ、
稼ぐのは難しいけど、将来的に音楽以外の仕事で食っていくのは考えられないくらい音楽好きだということ。


私は洋楽ロックのいくつかのジャンルが好きだったけれど、
彼はクラブミュージックが好きで、派遣の仕事をしながら創作やDJをしていること。


お母様が難病なのもあり、実家に住んでいること。


私の病気のこと。


お互いのことをたくさん話していました。


彼は不思議な感性を持っていて、
だけどリアリストでもあって、
文章からでも物腰柔らかな雰囲気が伝わってきて、


不思議な魅力のある人でした。


自然と、もっと彼を知りたいという気持ちが、
どんどん増していって、


確か一ヶ月ほどメールだけの日々を過ごした頃、


彼に


「会ってみたい」


と、申し出ました。


勿論自分からそう誘ったのは初めてです。
それまでは常に受け身な自分だったので。


「俺、ネットで出会った人と会うのとか初めてですごい緊張するんだけどw」


と、この時も彼は戸惑っていましたが、
会う約束をしてくれました。


そして当日、
今までにないくらいの緊張を私も抱えながら、
待ち合わせ場所に向かったのです。