「まさか先輩…

 最初っから…」

「最初っからって何の話よ」

「いつからなんですか、夫とは」

「さぁ~いつからかなぁ~(笑)」


嘲笑いながら私を見る先輩と夫


耐えがたい屈辱的な光景


 なんなのよ…

 わけわかんないよ…

 

 

「だけど先輩も趣味が悪いですね。
 こんな浮気男が良いなんて。
 しかもSEXはド下手なのに」


頭にきた私はとにかく反撃した

しかし…


「あれ? 忘れちゃった?
 私がどんな女か」

「あ…」

 

 

 そうだった


 先輩はSEXと恋愛は別って人だった


「まぁ私ちゃんには無理でしょうね、彼は。
 でも私と彼は同じ考えだから
 全然問題無いの。分かった?」


何も言い返せない

もう無理だと思った私は
そのまま帰ろうとした


「どこ行くのよ。

 ちゃんと持ってってよ」

 

「もうゴミみたいな
 置き方してるじゃないですか!
 捨てておいてください!」


すると先輩は

 

また薄ら笑いを浮かべながら言った



「そんなこと言わないでよ~
 広いとこに住んでるんでしょ?(笑)」





血の気が引くのが分かった





「え… なんで…」


 なんで先輩が知ってるの…?

 

 

動揺する私に

先輩は追い打ちをかける

 

 

「スゴいよね~あんな高級マンション。
 まぁ、さすがに私でも
 それと引き換えの生活は無理だけど(笑)」



 だから…

 

 何で知ってるの?



「ちょっと待ってよ!
 秘密厳守じゃなかったの?
 なんでアンタが知ってんのよ!!」


思わず先輩に詰め寄った

 

 

「秘密厳守? 何のこと?
 ついに妄想するようになったの?(笑)」


「ふざけんなぁっ!!!」



大声を出したとき
 

頭の中で全てが繋がった



「あ… あぁ…」


「何よ、どうしたのよ」

 

 

「先輩…
 全部先輩なんですね…」


「だから何のことよ」


「私の悩み相談するフリをして…
 

 店を紹介しといて…

 

 とても私じゃ行けないって

 ガッカリさせてから…

 

 か、彼を紹介して…
 

 私が彼に夢中になったら…

 

 わざとバレたように演技して…

 

 あ… あの部屋へ導いて…

 

 私への仕事を切って…
 

 私の逃げ道を全部無くして…」


「あらあら、重症ね(笑)」


「私を陥れるために…
 

 そういうことだったんですね…」

 

 

先輩は小さく鼻で笑うと

 

勝ち誇ったように私に言った

 

 

「まぁ、仮にそうだったとしても
 全部あなたが選んだ結果でしょ?


 ぜ~んぶ自分で決めたことじゃないの?
 

 人のせいにしちゃダメよ(笑)
 

 それに、
 私は”やめろ”って言ったじゃない」


「それもわざとですよね…
 

 舞い上がっている人は
 応援されるより反対された方が
 より舞い上がるって

 聞いたことあります…」


「あら、物知りなんだ(笑)」

 

 

 

「まさか…


 私は先輩を…
 

 一番信頼してたのに…」




夫や先輩が何か言ってたけど
全く耳に入らなかった私は

そのまま部屋を出ていった




 ウソでしょ…

 

 

 

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