急に自分に振られて戸惑った


「え… ケジメって…」


「俺が出張だって言ったら
 

 速攻でケツ振って会いに行くぐらい
 コイツのことが好きなんだろ?
 

 離婚してやるから
 ちゃんとケジメだけはつけろ」



 なんで…



「ちょ、ちょっと待ってよ…
 なんで昨日会ったことまで

 知ってんのよ…」

 

 

すると夫がまた高笑いしながら

私を嘲るように続けた

 

 

「てっきり連れ込むかと思ったら
 自転車で会いに行くから焦ったわ(笑)


 ホントは1回で終わらせたかったが
 

 しょうがないから昨日は
 お前と別れた後にコイツ捕まえて
 全部ゲロさせたってわけ。
 

 で、今日はお前の番。分かったか?」



 え…

 

 出張って罠だったんだ…
 

 そこで彼と会うなんて…

 

 最悪のタイミング…



 

「べ、別にアンタが

 出張だったからって…」

 


思わず

”違う”と言おうとしたら遮られた


「ただの偶然みたいだな。

 でもやっぱ
 神様はちゃんと見てるんだな(笑)」

 

 

ぐうの音も出ないとはこのこと


何も言えなくなった私に
 

夫が最後通牒をしてきた


「お前からも慰謝料貰わなきゃだが、
 請求したところでお前は払えねぇだろ。
 

 だから慰謝料無しにしてやるから
 その代わり財産分与も無し。
 

 分かったらこれにサインしろ」


夫は封筒からまた書類を出して
私の前に差し出した


そこには

 

”離婚届”と

 

”離婚協議書”の文字

 

 

昨日は離婚届を突きつけて
慰謝料貰って別れる話ししてたのに

一夜明けたら真逆の現実



あまりの展開に頭が追い付かない


私が固まってたら夫の追い打ち


「何やってんだよ。

 さっさと書けよ。
 いつでも離婚するって

 言ってたじゃねぇか」


その言葉に思わずキレた

 

 

「ふざけんじゃないわよ!


 アンタだって浮気してたくせに
 なんで私だけ

 責められなきゃいけないのよ!
 

 アンタが偉そうに
 私を責める権利なんて無いわ!」


夫は薄ら笑いを浮かべ


「まだ言ってんのかお前(笑)
 

 俺と離婚したかった

 お前の妄想だろ。
 

 そこまで言うんなら

 証拠出してみろよ。
 

 何かあるのか?

 

 こっちには山ほどあるけどな」


そう言うと夫は
封筒の中から

 

大量の写真を広げた

 

 

どれも私と彼の写真


車の中でキスしているものや
 

ホテルの出口で

キスしているものも


自分の不倫の証拠を突きつけられ
 

また私は固まった


「どうせこれは複製だから
 記念にやるよ(笑)


 ちゃんと調査報告書の中に
 お前らの不倫の記録がまとめてあるから。
 

 いいかげんゴネてないで
 さっさと書いて出てけよ」

 

 

反論はできない

だけど


このまま夫の思い通りになるのは
どうしても許せなかった


「ほぉ…

 まだ抵抗するのか…
 

 ここまでやっといて
 反省の色がゼロってのは…
 

 分かってたけどお前って
 正真正銘の”クズ”だなホント」


「クズって…
 アンタの方がクズでしょ…」

 

 

「スゲエなお前、ホント。


 10年も目の前の夫を裏切って
 不倫してたのがバレたのに、
 

 謝ることすらできないんだもんな」


「冗談じゃないわよ!
 

 アンタのことなんて
 とっくの昔に大っ嫌いだわ!
 

 なんでアンタに

 謝んなきゃいけないのよ!」


すると

 

夫が大きくため息をついた


「なんでこんなのと
 結婚しちゃったんだろうな~ホント…」

 

 

「な… よくそんな…」


「若い嫁さん欲しかったから
 俺にシッポ振ってきたお前でいいかって
 安易に結婚決めたのが間違いだったわ。
 

 何でもかんでも相手が悪い…
 

 いつも自分は絶対悪くない…
 

 呆れたけど子供たちが
 成人するまではって我慢したんだよ。
 

 だけどお前の我儘に

 子供たちも振り回されて…


 あの2人には悪いことしたわ」



 え…?

 

 子供達も…?


 どういうこと…?

 

 

 

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遅過ぎた後悔 本気で好きだった 身体を許す時 歪んだ猜疑心

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