2人で家に帰ったけど
お互い
一言も口を開かなかった
部屋に入ると夫が
「今日はソファで寝るよ…
君はベッドで寝ていいから」
促されるがまま
寝室に向かおうとしたけど
まだ夫に
謝っていないことに気付き
振り返って夫に頭を下げた
「本当に… ごめんなさい…」
夫は何も言わず
私に背を向けた
謝ったところで…
今さらだよね…
仕方なく寝室に行き
ベッドに入る
その瞬間
涙があふれだしてきた
布団を頭からかぶり
声を殺して号泣
なんで…
なんであんなこと言っちゃったの…
思わず出た
私の心の叫び
それを夫に伝えてしまったことを
後悔していた
だけど
偽らざる私の本心
だから本当は
私が夫に
伝えなきゃいけなかったこと
それは同時に
私が最も
夫に知られたくなかったこと
それを伝えてしまった
やがて泣き疲れた私
意識が遠くなりかけた時
夫が寝室に入ってきた
え…
どうして…
そのまま夫は
私の横に寝ると
後ろから
優しく私を抱きしめた
あ…
「まだ良く分からないけど…
ちゃんと…
君を捕まえておかないと
いけない気がして…」
「ど… どうして…」
また私は泣き出してしまった
「一つだけ分かったのは
君がずっと苦しんでたこと…
それを僕は…
全然気付けなかった…
だから…
遅いかもしれないけど…
ちゃんと受け止めるから…」
あぁ…
だけど…
「もう無理だよ…
もう… 私は…
あ、あなたを…
裏切っちゃったんだもの…」
すると夫は
私を強く抱きしめた
「落ち着いて…
僕はそばにいるから…」
あぁ…
あなた…
私は夫の方を向いて
夫の胸に顔をうずめた
「お願いです…
私を抱いてください…
私の身体は
あ、あなたのものだって…
感じさせてください…」
夫はそのまま
私を抱いてくれた
これが最後なのかな…
そう思いながら
私は夫のすべてを
私の身体に焼き付けようとしていた
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遅過ぎた後悔 本気で好きだった 身体を許す時 歪んだ猜疑心