「2人ともちょっといい?」

夫の呼びかけに
”は~い”と言って駆け寄る娘たち

「実はね…
 ママがちょっと用事が出来て
 遠くに行かなくちゃいけなくなったんだ」


 あ… そういう感じにするんだ…


子供たちの反応は予想外だった

 

 

「うん、分かった」

2人とも笑って受け止めている
それどころか

「じゃぁパパと3人になるの?
 やったぁ~!」

なぜか喜んでいる子供たち


 え…? なんで…?

 ママがいなくなってもいいの…?

 

 

「ママがいなくなるから、
 これからは自分のことは

 自分でするんだよ」

「大丈夫だよ!
 今でもそうだから変わんないもん」

「あ、じゃぁお洗濯は私!」

「え~、じゃぁ私はお掃除!」


まるで楽しいことが始まるように
 

夫と3人ではしゃいでいる



 ウソでしょ…

 

 

 

 上の子はもう四年生だし
 下の娘はお姉ちゃんの真似ばかりするから

 最近は全然手がかからなかった

 だからといって
 私が不要とまでは思えない

 なのに
 

 どうして子供たちは平気なの…


 いやそれより

 寂しくないの…?

 

 

「やることはそれだけじゃないよ(笑)
 これからは3人で

 一緒にやっていこうね」

「は~い!!」


すると夫がこちらを向いて


「君がいなくても3人で頑張るから。
 気にしないで行っておいで」


優しい口調

だけど目は笑ってなかった

 

 

 

子供たちが部屋に行くと


夫がまた冷たい目になった


「そういうことだから、
 子供たちは気にしないで
 さっさと出ていってよ」


そう言われた瞬間

今までの母親としての自分を
否定されたような気がして

思わず夫に反論した

 

 

「そんな簡単にできるわけないでしょ!
 家事を甘く見ないでよ!」


すると夫が

またため息をついた


「なぁ…
 君は、さっきの子供たちの様子
 どう思ったの?」

「え… どうって…」

「普通はさ、どんなに反発してても
 ママの方に行くのが子供じゃない?
 不思議に思わなかった?」

 

「それは…」

「さっきの子供たちの様子で確信した。
 君は俺だけじゃなく
 子供たちも蔑ろにしてたんだって。
 だから君がいなくなると聞いて
 あんなに喜んだんだなってさ」

「そりゃ… 最近は…」

「最近だけじゃないだろ。
 以前から子供たちは
 ”ママは全然話を聞いてくれない”
 って俺に訴えてたよ」

 

 

 え… そんな…


「これで良く分かったよ。
 君が大事なのは自分自身だけ。
 だから子供にまで愛想つかされるんだよ」


夫から現実を突きつけられた


「分かったらさっさと荷造りして
 早くこの家から出ていきな」

 

 

【BACK NUMBER】
遅過ぎた後悔 本気で好きだった 身体を許す時 歪んだ猜疑心

初めての挫折 優しさの罠 好奇心の代償 忘れてた感情