しばらくリビングで

いろいろ考えてたけど
 

何もいい考えなんて浮かばない


 どうしたらいいんだろう…


分からないまま寝室に行くと
夫は私に背を向けて寝ていた


 いつも上を向いて寝てるのに…

 まぁ そうだよね…

 

 

夫を起こさないように
そっとベッドに入る

いつもは私も上を向いてるか
夫の方を向いて寝ていた


 どうやって寝たらいいんだろう…


どうでもいいことで悩み始めた私

気が付くと

夫の方を向いていた

 

 

薄暗い中でも
はっきりと分かる夫の背中

考えてみたらこんな風に
夫の背中をちゃんと見たこと無い


意外と大きい背中


それを

ただぼんやり見ていた


 どうやったら許してもらえるかな…

 

 

いつの間にか私は

夫の背中に手を当てていた


手のひらに夫が伝わってくる


手を当てたまま
夫の背中を見ていたら

不意に夫が


「…何やってんの?」

 

 

まだ寝ていない感じがしたので
驚くことは無かった


「あ…

 ごめんなさい…」


「今さら何?
 

 俺を裏切ったお前と

 もう二度とするわけないだろ。
 

 罪滅ぼしにも何にもならないから
 触らないでくれるかな」


冷たい夫の声


 そんなつもりなかったけど…

 そう受け止めるよね…

 

 

「はい… ごめんなさい…」


仕方なく私も夫に背を向けた


すると


たった今
”私は夫に拒否された”ことに気付き

言いようのない虚しさが襲ってきた



 そうか…

 拒否されるってこういうことか…

 

 

 

まるで
私の存在を全否定されたような感覚

今まで感じていた”疎外感”なんて
全然比べ物にならない



 夫にとって私は


 もうそういう対象じゃ無くなったんだ…



自分は夫に対して愛情を失っておきながら

夫からの愛情を失うことに
ショックを受けていた

 

 

 

 

ほとんど眠れなかったので


明るくなったら
そっとベッドを出てリビングへ


ソファに座り
しばらく呆然としていたけど


 いけない…

 ちゃんと”主婦”はしなきゃ…


そう思い
いつもよりも早く家事を始めた

 

 

 

やがて

夫も子供たちも起きてきて
 

いつもの朝がやってきた


夫と子供たちが
楽しそうに食事をしている

いつもの光景


私はそれを
 

どこか遠いところから見ている感覚



 何やってたんだろうな私…

 

 

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