彼と一緒に入ってきた男は


見るからに”その筋の人”


「どうでしょう?」

「うん、これなら大丈夫だろう。

 ここまで仕上げるとは

 相変わらず見事だな(笑)」


何のことかと思っていると
男が私に近づいてきた

恐怖で固まる私


 え? 私…

 どうなっちゃうの…?

 

 

男は上着の内側に手を入れると
分厚い封筒を取り出し


私に向かって投げた


 え…? これ… お金?


「今日はお疲れさん。
 これから頑張ってな」

そう言うと部屋から出ていった

彼は男にお辞儀をして見送っている

 

 

 

 これって…

 

 まさか…



すると彼が私の横に来て
優しく頭を撫でながら私に告げた


「良かったね。
 気に入ってもらえたみたいだよ」

「あ… あの…」

「ん? 分からない?
 お仕事紹介してあげたんだよ」

 

 

 

 やっぱり…



「今日みたいなハードなのは
 めったにないから安心して。
 誰の責めでもちゃんと反応するかって
 確認のためだから」

「だ… 誰でも…?」

「そう。私さんなら
 これからいっぱい稼げるからね」




私は娼婦になったと
 

はっきり理解した

 

 

 

 

「もう家賃はいらないから
 この部屋を自由にしていいんだよ。
 良かったね」



 いいわけない…

 そんなの…

 

 いいわけない…



「じゃ、頑張ってね」


そう言うと彼は


部屋を出ていった

 

 

 

 

突然 大勢に蹂躙され
告げられた残酷な事実

受け入れられるわけが無かった


 なんで…

 どうしてなの…


たった今起きた現実が信じられず

男たちに蹂躙された姿のまま
ただ呆然としていた

 

目の前に置かれた分厚い封筒

開けてみると
やっぱりお金が入っていた

私が1か月頑張って働くより
はるかに多いお金


 だけど…


 このお金は…

 


 私が自分自身を売ったお金…

 

 

 

 

 

 

 

 何やってんの私…

 

 

 

 

 

 

 

現実を目にして
自分の置かれた状況を把握して

私は初めて後悔していた



 どこにいったの…


 どこにいっちゃったのよ…



それでもなお
私は彼を求めていた



彼しか縋る人はいなかった

 

 

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