PCに向かって作業をしていた午後

不意にスマホが鳴った


彼からだった


驚いた私は思わず立ち上がり
スマホを持って

 ど、どうしよう…

とオロオロしていた

 

 

うろたえても仕方ないと


意を決してメッセージを開く


「先日はありがとうございました。
 その後いかがでしょうか?」


 いかがでしょうかって…


どうするのか堂々巡りをしていた私
 

完全にパニックになってしまった

 

 

 なんて返事をしよう…


彼のメッセージを見つめて
焦っていたけど

しばらくすると

そのメッセージに彼の顔が重なって
無性に会いたくなった


 よし…

 

 

「先日はありがとうございました。
 またお時間が合えば、と思っています」


彼に返信した


するとすぐ返事が来た


「来週の木・金なら午後空けられます。
 いかがでしょうか?」


 うわ…

 

 指定された…


 来週は…

 

 うん、大丈夫だ…

 

「では木曜日の午後二時でお願いします」

 

「分かりました。では木曜日に」

「よろしくお願いします」


返信を終えると
すぐにメッセージを消去して
 

スマホカレンダーに
”客先打合せ”と入力した


 ふう…

 緊張したぁ…

 

 

やり取りの途中で見られても
仕事だと言い訳できるような
事務的なやり取り

先輩にレクチャーされたてたけど


実際にやってみると
なかなかの緊張感だった


 そういう関係なんだよな…

 うん 勘違いしちゃダメだ…

 

 

”本気になっちゃダメだよ”

先輩の言葉を思い出し
あくまでもこれは
”トレーニング”なんだと
自分に言い聞かせた


そうしないと

自分の本心に気付いてしまう


そんな自己防衛だったのかもしれない

 

 

とはいっても
これで彼に会えることになった嬉しさで

また私は舞い上がっていた


 この前は最高だったな…

 今度は何をしてくれるんだろう…


楽しみで色々妄想し始めて
ふと壁掛けカレンダーに気付いた

 

壁掛けカレンダーにも
私の仕事スケジュールが入れてある


 そうだ…

 

 ここにも書かないと


来週の木曜日に
”14:00 客先打合せ”
と記入した

記入し終わった壁掛けカレンダーを見て
また妄想を始める私


それが


とても幸せな時間になっていった

 

 

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