「”作業”ですか…


 言われてみれば確かに、
 好きな人とは絶対にするもの、
 と思ってました」


「だから”義務”みたいなものかな(笑)
 

 そう捉えちゃってると
 自分の意思に関係なくって感じで
 楽しくないよね」


「確かに、楽しくないです(笑)」


優しく同調してくれて
私は嬉しくなった

 

 

「な~るほどね~
 さすが経験豊富なだけあるね(笑)」

「やめろよそんな言い方~
 プライベートだよそれ(笑)」


まるで恋人同士のようなやり取り
 

なんか2人が眩しく見えた


「ん?どうしたの私ちゃん」

「いや…

 なんか恋人同士みたいだなって」


すると2人が大笑いした

 

 

「あ、そうか。
 もっとドライだと思ってたんだ」

「はい、なのでちょっとビックリして」

「だってそういう関係なんだから
 自然とそうなるでしょ?
 私にとっては”特別な友達”かな」

「そうだね。僕も同じ」


 ホントに知らなかった世界だな…


 でも…

 

 

「でもそんな感じだと、
 好きになっちゃったりしないんですか?」


「まぁ…

 正直あるよ(笑)
 あなたは?」


「そうだね…

 無くはない(笑)」


やっぱりそうなんだ、と思ってると
 

先輩が真顔になった


「でもね、すべては相手次第なの。
 相手が嫌がることをしちゃダメだし、
 相手が受け入れなかったらその時点で終了」

 

 

一転した先輩の真剣な表情


戸惑う私に先輩が続けた


「普通の男女なら友達に戻れるかも。
 でももうこの関係は成り立たないし、
 もしお互い好きになったとしても…
 分かるよね?」


「あ…

 つまりその相手が
 他にもこういう関係の相手がいても
 ってことですか?」


「そう。そうじゃない限り
 この関係から恋愛には発展しないの」

 

 

”踏み絵”を迫られている


そう感じた


 私の覚悟を確認してるんだ…


すると彼が割って入った

「まぁ待ってよ。
 そんなにいきなり迫っても
 今の今まで悩んでた人が
 答えられるわけないでしょ」

優しい口調で私を守ってくれた

 

 

「あ…

 そうだよね、ゴメン。
 なんか私ちゃんが心配でさ…(笑)」

「まるで身内だね(笑)
 でも良かったね。
 こんな親身になってくれる人がいて」


 とてもスマートな仲裁
 こんな人初めてだな…


「じゃぁ、これからのこと考えようか」

 

「あ、はい」

「さっきも言ったけど
 まずは”楽しいこと”と思えるように
 トレーニングするってのはどうかな?」

「トレーニング… ですか?」

「そう。いきなり気持ち良くなろうと
 するんじゃなくって、まずは
 ”楽しくSEXする”から入るってどう?
 雰囲気を楽しむって感じで(笑)」

「あ、はい。それならいけそうです(笑)」

 

 

「よし。じゃぁ行きましょうか」


笑顔で彼が言う


 …え? 今から?


「交渉成立ね(笑)
 じゃ、私は消えるわね」


 …あ、先輩もいなくなっちゃう



戸惑いながら私は
 

気が付けばホテルにいた

 

 

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