そして会う日がやってきた

私は朝からソワソワしてて


夫が出勤するとクローゼットに直行し
何を着ていこうかとウロウロ

でも頭の中は


 どんな人かな?
 

 私のことなんて話せばいいんだろう?
 

 いきなり今日、とかあるのかな?

 

てな感じで
 

まるで初デートに行くみたいに
また舞い上がっていた

 

 

結局私は”清楚系”風のコーデ
下は迷った挙句ロングスカートにした



待ち合わせは繁華街近くのカフェ


お店に行くと
もう先輩たちが先に待っていた

先輩が私を見つけて手を挙げる
 

私がそれに気付くと
横の男性も私に軽く微笑んだ

思わずお辞儀をする私

 

 

ドリンクを持って席に向かう
そのトレイを持つ手が震える


 やっぱ緊張するな…


席まで歩きながら

改めて男性を確認


 思ったより若そう…

 ギリ30代かな?
 

 ビジネスカジュアルって感じだけど
 センス良さそう…
 

 てか お金持ちっぽい雰囲気だな…


男性が先輩と話しているのをいいことに
席に着くまでガン見してしまった 

 

そんなことしてたら


席に着くときに椅子に引っかかって
思いっきりよろけた


「何やってんの(笑)
 あなた、彼に見とれてたんでしょ?」


さすが先輩はお見通し


「やめなって。緊張しただけだよね?」


優しい声で先輩をたしなめつつ
私をフォローしてくれる彼

 

 

「あ… ごめんなさい。
 初めまして、私です」

思わず仕事みたいにフルネームで挨拶
すると彼は少し戸惑ったような顔をして


「あぁ…

 はじめまして○○です」


と下の名前だけで答えた


「あ、そうか言ってなかったねゴメン。
 

 下の名前だけでいいのよ。
 

 お互いのプライベートに
 一切関わらないのが私たちのルールなの」

 

 

「そうだったんですね…

 ごめんなさい」


「いえいえ、謝ること無いですよ(笑)」

 

優しい笑顔
 

なんか信頼できそうな感じがしてホッとした


「だいぶ緊張ほぐれたみたいね(笑)
 

 じゃぁ、いちおう私からも話してるけど
 私ちゃんから自分のこと話す?」


「そうですね、じゃぁ…」


私は”感じない”悩みを話した

 

 

話し終えると先輩が

「という訳なの。どう?」

と彼に促す


「う~ん…

 そうだなぁ…」


思案顔の彼
 

そして考え込んでしまった


 やっぱそうだよね…
 

 わざわざ”感じない女”とシたくないよね…

 

不安になってたら彼が口を開いた

 

 

「別にそういう専門家じゃないから
 理由とかは全く分からないんだけど…


 ただSEXすればいいっていうような
 単純な話じゃないような気がするな」


「え?どういうこと?」


「好きっていう感情か
 気持ちよくなりたいっていう感情か
 SEXってそのどっちかじゃない?
 

 でも私さんの話を聞くと
 

 なんとなく”作業”としてしか
 SEXをしてこなかったんじゃないかって」

 

「作業?」

 

 

先輩も私も意外なワードで戸惑った


「たぶん最初の彼は
 ”好き”って感情でシたんだけど
 

 気持ち良さを知る前に
 ぞんざいな扱いされちゃって…
 

 だから私さんにとって

 

 SEXは”好きな人とする作業”みたいな
 位置付けになったんじゃないかって」


 そういう観点もあるのか…


まるでカウンセリングみたいな会話
 

でも私は前のめりだった

 

 

 

【BACK NUMBER】
遅過ぎた後悔 本気で好きだった 身体を許す時 歪んだ猜疑心

初めての挫折 優しさの罠 好奇心の代償