案内されたのは
繁華街のすぐ横にある

マンションの最上階


先輩は玄関のオートロックで名乗り
部屋のインターフォンでも再度名乗った

私が呆気にとられていると

「ここはセキュリティ万全だから」

と言って私に笑いかけた


だけど私は
未知の世界に来たと実感し
 

緊張で固まっていた

 

 

やがて玄関が空いて
ボーイさん風の男性が現れた

「先輩さんようこそ。
 こちらは?」

ボーイさんが私の方を見る

「ここを紹介しようと思って。
 いいかしら?」

先輩が明るく言うと
ボーイさんが玄関をフルオープンし

「ようこそいらっしゃいました」

 

 

 

玄関の先には
薄暗い照明で浮かび上がった
カウンターのようなものが見える

促され中に入ると
再びカウンターの中から

「先輩さん、そしてゲストさん
 いらっしゃいませ。
 ごゆっくりお楽しみください」

別のボーイさんが私たちに声を掛けると
カウンター横の扉を開けた

 

 

 

そこは

広いショットバーのような雰囲気の
ちょっと怪しげな空間が広がっていた


カウンターやボックス席があり


それぞれで
男性や女性が飲んでいるように見えた




 なんだここ…

 

 

 

 

私達が入った瞬間に
皆がこちらを見たので

私は場違いなところに来たと
怖気づいていた


「とりあえず座ろうか?」


先輩の声もどこか遠くに聞こえる

促されるままカウンター席に座った


 なんかスゴいとこ来ちゃったんじゃ…

 

 

 

「ビックリしたかな?」


「はい…

 何ですかここ…?」


「ここは会員制のバー。
 ハプニングバーって言ったら
 分かりやすいかな?」


「ハプニングバー?

 なんですかそれ…?」


「まぁ要するに
 出会いに特化したバーってところよ」


「それって…」

 

 

「そう。お相手を見つけるためのバー。


 ここでお互い気に入った相手がいれば、
 っていう明確な目的ね」


「こんなところあるんですね…」


「このバーで相手が決まれば、
 そのまま奥の部屋に行ってもいいし
 外のホテルに行ってもいいの」


先輩が目で促した先には
さらに奥へと続く通路が見えた 

 


「で、普通はここに入ったら
 もっと奥の席に座るの。
 

 すると男性の方から声を掛けてくれるわ。
 

 でも今日はあなたはゲストだから
 この入り口近くの席。
 

 ここは初めて来た人が座る席なの。
 だから誰も声を掛けてこないでしょ?」


言われて気付いた
 

さっきバーに入った時は一斉に見られたけど
今は誰もこちらを見ていない


「だから緊張しないで大丈夫よ(笑)」



 いやそう言われても…
 

 

 

とんでもないところに来たと実感して
早くこの場から逃げたかった


だけど

そんな思いとは裏腹に


未知の世界への興味で
ワクワクしている自分もいた



緊張と興奮したまま

私はこの世界を知ることになる

 

 

 

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遅過ぎた後悔 本気で好きだった 身体を許す時 歪んだ猜疑心

初めての挫折 優しさの罠 好奇心の代償