”ここは私が責任を取る場だ”

不意に思い出した今日の決意


 そうだ

 私が責任を取らなきゃいけないんだ

 私が去らないと
 夫は苦しみ続けるんだ


息を吸って
私から切り出した

 

 

 

「あなたの言葉…
 とても嬉しかったです

 こんなことをした私のことを…

 謝罪を受け入れてくれて
 そんな言葉までもらって…

 本当にありがとうございました」



そう言って立ち上がり

夫に向かって深く礼をした

 

 

 

なかなか顔を上げられない

お礼をした瞬間に
涙があふれだして止まらなくなった


 だめだ ちゃんと責任を取るんだ


自分に言い聞かせて顔を上げた



夫はうつむいたままだった

 

 

 

「本当に…
 私はあなたと出会って幸せでした

 そんな幸せを
 台無しにしてしまって
 すみませんでした

 今まで…

 ありがとうございました…」



精一杯の言葉を伝えたけど
 

夫に反応は無かった

 

 

後ろ髪引かれる思いがして
つい言ってしまった


「あなたを傷つけたことは
 

 どれだけ謝っても足りないのは
 分かっています…

 本当にごめんなさい…」



すると夫がうつむいたまま



「分かってるんなら…
 

 早く出て行ってくれないかな…

 

 頼むよ…」

 

 

 

もうこれ以上いられない


その現実に
胸が張り裂けそうになりながらも

このまま去るしかなかった



「今まで…

 ありがとうございました…」



私は静かに
 

2人の部屋を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 これで

 本当に終わった

 

 

 

 

 

 

 

そこから

どうやって自分の部屋に帰ったのか
全く覚えていない


気が付けば

真っ暗な部屋の中で


ただ呆然としていた

 

 

 

 

 

 

 

もう

涙は出なかった

 

 

 

 

 

 

 

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