そして迎えた再会の日

私は約束の時間よりかなり早く
マンションの前にいた


 夫を待たせちゃいけない

 これ以上夫に迷惑を掛けない


その一心だった


やがて遠くから
歩いてくる夫の姿が見えた
 

 

 

 

 

 

 

 夫だ…

 

 

 

 

 

 

 

思わず駆け寄りそうになったけど
もうそんな関係じゃないんだと思い直し

夫の視界から外れた
マンション脇で夫を待った


やがて夫もマンションに近づき
私の存在に気付いた

私は夫が気付くと同時に
深くお辞儀をした

 

 

「あぁ… もういたんだ」

夫はそう言ってマンションの中に入る
私も後を続いた


そこから玄関まではお互い無言


玄関を開けて夫が
「どうぞ」と私を先に導く

私は頭を下げながら


久々に2人の部屋に入った

 

 

 

私が出て行った時のまま

何も変わっていなかった


「座って…」

夫がダイニングの椅子に座り
私に促したけど

「今日は本当にありがとうございます」

そう言って頭を下げ続けた

 

 

それを黙って見ていた夫


しばらくして

「もういいよ… 座って」

「はい。ありがとうございます…」


私もテーブルについた


「もう会えないと思ってました。
 会ってくれてありがとうございます」


私の言葉に夫は反応しない

 

でも最後のような
冷たい目じゃなくなってる気がする


 ちゃんと謝罪ができそうだな…


微妙な空気だけど
私にはそれでも十分だった


夫から話す気配は無い


 一方的になるかもしれないけど


 せっかく夫が与えてくれた機会を
 無駄にしたくない…

 

 

夫に再会できた嬉しさと

夫を目の前にして
改めてこみ上げる罪悪感


 でもここが 私が責任を取る場面だ


そんな思いでいっぱいだった

 

 

以前のように
ダイニングテーブルで向かい合う2人


だけど

あの頃とは全く違う2人


夫への想いがあふれだしてくる私
 

でも今は
そんな私の想いは関係ない


 目の前にいてくれる夫に誠実に話そう

 ちゃんと謝ろう…

 

 

【BACK NUMBER】
遅過ぎた後悔 本気で好きだった 身体を許す時 歪んだ猜疑心

初めての挫折 優しさの罠