「しかしいい根性してるよね~
 自分からふったくせに
 寂しくなったらまたすり寄るって」

「いや… そんな…」

「あんな男だからさ、
 また浮気してるなってすぐ気付いたよ。
 そしたらその相手が
 よりによってアンタとはね」

「え?気付いてたの」

「そうだよ。腹立ったけど
 いいこと思いついたんだよね」

 

 

「それって、まさか…」


「そう。あんたのダンナに教えてあげたの。
 あんな純粋そうな良い人なのに
 裏切るってひどい女だよね、ホント」


目の前が真っ暗になった


「もう離婚したんだってね。
 ダンナさんがお礼がてら報告してくれたよ」

「あ… あ…」

「ダンナさんのことは心配しなくていいよ。
 こっちが片付いたら
 私がちゃんと面倒見てあげるから」

 

「えぇ? あなたまさか
 彼と離婚して… お、夫と…?」

「さぁ~どうでしょう(笑)
 まぁとりあえず慰謝料払ってね。
 分割なんてめんどくさいの無しだよ。
 文面通り一括で今月中に払って。
 無理なら体でも売ったら?(笑)
 じゃぁね」


そのまま電話は切れた



まさかの相手だった

 

 

 

 それにしても…


 知ってたって言ったけど

 相手が私だって
 どうやって知ったんだろう…

 彼女も探偵に依頼して?

 だったらもっと早く
 私に言ってくるんじゃ…

 それにどうやって夫に知らせたの…?

 

 

ここで気付いた


 そういえば

 夫が探偵事務所に頼むお金なんて
 持っていたとは思えない

 ましてや追加調査なんて
 そんな余裕は絶対に無いはず

 でも

 社長夫人の彼女が
 裏で糸を引いていたとすればあり得る

 

 それに
 夫は”探偵事務所が”って言ってたけど
 それって彼女の言葉だったんじゃないか

 実は探偵に依頼してたのは彼女で

 追加調査というのは
 私が夫から離婚を切り出されて
 確実にまた彼と会うだろうという
 そんな見込みで依頼していたのに
 私の上司との過ちまで手に入れられた

 彼女にすればラッキーだったろうな…

 

 

なぜ夫にバレたのか
そのモヤモヤが解けた気がした

それに

彼女にとってみれば
私は憎むべき女

私を貶めるチャンスと思ったことだろう


 そういうことだったのか…

 

 

 

だけど
それが分かったところで何も変わらない


私が夫を裏切ったという
 

その事実に変わりはない


過去はどうあれ
今は彼の妻である彼女に対して
私が償うのは当然

その手段をどうこう言える立場じゃない


全ては私の自業自得

 

 

 

言う通りにしないと
彼女は何をするか分からない

仕方ないから
親に事情を話して工面してもらった


 まさかこんなことだったなんて…


自分の愚かさを
改めて呪った

 

 

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