土曜日の昼下がり

ソファでボーっとしてた私は
玄関の開く音で我に返った


夫が帰ってきた


「お… おかえりなさい…」

私の声に夫は反応せず
ダイニングテーブルの椅子に座った

 

 

「で、どうすることに決めたの?」

夫は窓の外に目をやりながら
無機質な声で私に問いかけた


「どうするって…」

私が口ごもっていると
夫は大きくため息をついた


「やっぱりね…
 何も考えてなかったんだろ?」


お見通しだった

 

 

「もう君にはあきれたよ…」

そう言うと夫は
再びあの分厚い封筒を出した


「不倫相手が増えたところで
 もう驚きはしないけど
 

 心底あきれたよ…」


そう言いながら
私にの横に封筒を投げた



「元カレに会社の上司か。
 

 もう救いようがないね」

 

 

 

 え… なんで…

 どうして上司とのワンナイトまで…


 完全に終わった…

 

 

 

 

「探偵さんが

 他にも相手がいるなら
 夫から離婚を切り出されたら
 確実に会いに行くよって言うから


 ここまで来たら徹底的にって思って
 追加調査2週間をお願いしてたんだよ。

 まさに探偵さんの言った通りで
 報告書見て笑っちゃったよ。

 でもおかげで吹っ切れた。

 君という女性がどんな人だったのか
 はっきり分かったからね」

 

 

元々上司はそんな関係じゃなかった

そう言いかけたけど


今それを言ったところで
何の意味もないことに気付いた


私が夫を裏切ったのは事実だから


流された結果だったから
言い訳のしようもない

 

 

 

私が固まってると
さらに夫は私に封筒を差し出した

弁護士事務所の封筒だった


「離婚届と離婚協議書。
 

 不倫相手が1人増えたから
 最初から作り直しになっちゃったんで
 時間かかったよ。
 

 サインしたらその事務所に送って。
 

 裁判するんならそれでもいいけど
 分かってると思うけど
 君に勝ち目は全く無いから
 時間かかるだけで何のメリットも無いよ」

 

 

冷たい目で一気に話す夫

さらに


「この部屋も今月で解約だから。
 

 家具は好きなもの持ってっていいから
 早く出て行ってね。
 

 そうしないと俺も引っ越しできないから
 これ以上俺に迷惑かけないでくれよな」


と私に最後通告をした

 

 

「じゃ」

そう言って再び出ていく夫

私はそれを
何もできずに見送った


固まったまま涙も出ない


 終わった…

 

 

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