やがて朝の喧騒が収まり
静かになった頃に

彼からメッセージが来た

「おはよう!
 ちゃんと起きれたかな?
 今日も頑張ってね」

いつも彼は
私を励ますメッセージをくれる

いつもと変わらない文面

 

 

「今日って会えるかな?」


思わず言ってしまった

ボロボロだった私は
彼の優しさに縋りたかった


「え?今日って仕事じゃないの?」

「有給取ったの。
 無理かな?」

「いや大丈夫だよ!
 じゃぁ昨日と同じ時間でいいのかな?」

 

 

やっぱり優しく迎えてくれる彼


 無意識に会いたいと言ったけど
 受け入れてくれてよかった

 彼に会おう

 彼に慰めてもらおう…



ここでも私は
 

彼に救いを求めてしまった

 

 

 

「え… どうしたの?」


彼は車に乗ってきた私を見て驚いた


泣きはらした目にやつれた表情

驚くのも無理はなかった


「どうしたの?
 ダンナさんとケンカしたの?」

「いや… ケンカというか…」


私は昨日の一部始終を話した

 

 

「え~バレてたの?…
 マズいなぁ…」

焦りだした彼

 あれ? 思ってたのと違う反応…


そこから私は
夫と別れたくないことや
この先どうしようといった話をしたけど
 

彼の耳には全く入っていないようだった


 え…?

 

 慰めてくれないの?


彼の予想外の反応に戸惑う私

 

 

「ねぇ…

 どうしたらいいかな?」

「いやどうもこうも…
 バレたんなら会っちゃダメでしょ。
 早く帰りなよ」

「え…」


いきなり拒絶された


よく考えれば当たり前
 

だけどその時の私には
そんな判断能力は無かった

 

 

「だから… 早く帰れって」


彼の予想外の反応に驚きつつ
私が車を降りると

彼は即座に車を発進させて


私の目の前から去っていった



 ウソでしょ…



彼にも拒絶されたことが信じられなかった

 

 

 

帰りの電車の中から

「さっきはゴメンね
 どうしても会いたかったから…」

とメッセージをしたけど

そのメッセージは
既読になることは無かった



彼は逃げた

 

 

 

 そうだった…


 こんな奴だった…

 

彼はポジティブなくせに
面倒ごとからは逃げるのが常

それに嫌気がさして別れたことを
 

ようやく私は思い出した



 ホントにバカだ私…

 

 

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