いつものように彼に会って
いつものように帰宅したら
なぜか夫がいた
「え?どうしたの?」
想定外で動揺した私
声が裏返ってるのが自分でもわかった
「今日は有給取ってたんだ」
「え… そんなの聞いてないと思うけど」
「うん。言ってない」
「えぇ?それってどういうこと…」
自分の声が震えている
心臓がバクバク鳴っている
私を見ずに話す夫の姿
それが私に
この先を予感させた
「…今日、どこで何してたの?」
息をのむ私
言葉が出てこない
夫はそのまま何も言わず
黙って遠くを見つめていた
夕方のリビングに
重たい空気が流れた
「え… 誰って友達だよ?
ランチしておしゃべりして
帰ってきただけだよ」
何か言わなきゃと思った私は
咄嗟に噓をついた
夫はすぐに反応せず
しばらくしてから口を開いた
「おしゃべりってホテルでするの?」
ヤバい…
完全にバレてる…
でも 認めたら終わりだ…
「なに言ってんの?
ホテルって何のこと?」
さらにしらばっくれた私
するとここで
ようやく夫が私の方を向いた
泣いていた
「…謝るかと思ったら
さらに嘘を重ねるんだね
悲しいよ…
今まで俺は
いったい何のために…」
あ…
しまった…
夫は私と
なぜ私が不倫をしたのか
それを話し合いたかったんだ
なのに私は
最後まで夫を裏切ったんだ
夫は静かに泣き続けていた
私はどうすることも出来ず
ただ
夫を見つめていた
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遅過ぎた後悔 本気で好きだった 身体を許す時 歪んだ猜疑心