あれからもう 5年経った

 

 

 

夫はあの後

失踪してしまった


義両親も行き先を知らず

完全に連絡手段が無くなったが

 

時折”元気だ”と連絡があるようなので
最悪の事態では無くて安心した

 


だから”失踪”ではなく

 

私たちの前から姿を消した、
というのが正しいかもしれない

 

 

 

もちろん
義両親からはさんざん責められた

私はひたすら謝罪したけど
両親も一緒になって謝罪してくれた

私のために頭を下げる父と母
 

父は

「夫さんの様子から

 私の判断で自重させてました」

と言い私をかばってくれた

 

 

本当に申し訳なく

 

改めて自分の愚かさを恥じた

 

 

 

 

あれから私は

独り身でいる


これから先も

たぶん独りでいることだろう

 

 

 

 

理由はいっぱいあるけど

やはり一番大きいのは
自分の罪に対する私自身の贖罪方法は
これしかないと思ったから


それに

もう誰かとお付き合いが無理みたいだから

 

 

 

ありがたいことに
こんな年齢になった私でも
声を掛けてくれる人がいる

ところが

私に好意を寄せてくれるっぽい人と
会話したとたんに気分が悪くなってしまう


たぶん
心が拒否反応を示しているんだろう

 

 

 

最愛の人の人生を狂わせた私

そんな私が

幸せになんてなっていい訳がない


実際にそう思ってるし
体調にも出るんだから
深層心理もそうなんだろう

だから これからも私は独り生きていく

 

 

 

幸いなことに
仕事はとても順調だ

私の背中を見てくれる後輩もいる

私も先輩秘書のようになれてるかな?
今も時々先輩に会いに行く

私の現況を話すと理解してくれて
一緒に泣いてくれた

本当に先輩と出会えたことは
私の中では奇跡だ

 

 

 

今でも時々思い出す

夫が最後に見せてくれた
私への小さな笑顔

 


決して忘れることは無いだろう


私はあの笑顔を胸に抱いて
これからも生き続ける

 


夫への贖罪を胸に…

 


(終)

 

 

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