「私、目指すものが見えました。

 

 先輩にはなれないけど
 先輩のような姿を目指します!」

 


「や、やめてよ(笑)
 でもね、今とても大事なこと言ったよ」

 


「大事なこと…?」

 


「目標を定めると”その人を目指す”って
 言いがちなんだけど、

 

 当たり前の話で
 その人になれる訳無いし、

 

 成功例もその人だったからこそ。

 

 だから自分なりの”その人のような姿”を
 目指すことが正解だと思うのよ」

 

 

「あ、なるほど、そうですね確かに」

 


「だから私ちゃんも
 自分のやり方を見つけて
 それを後輩に伝えていってね!

 

 優しい先輩からのお願い(笑)」

 


「了解しました!(笑)」


やっぱりスゴイ人だなぁ…

憧れるなぁ先輩に…

 

 

 

そうだ…

今まで遠慮して言えなかったけど
私の悩みを聞いてみよう…
 

 


「あの…

 相談してもいいですか?」

 


「何よ今更(笑)
 あ、でも嬉しいな。

 プライベートでしょ?」

 


「なんで分かるんですか(笑)」

 


「だって今まで

 プライベート相談無かったもん」

 

 

「先輩には敵いません(笑)」
 

 


そして私は

自分の過ちを話し


なぜそうなったのか

分からないことを伝えた

 

 

 

「う~ん…

 どうなんだろうね…

 

 私に置き換えて考えてみると、
 ”挫折”を感じたから、

 じゃないかって」
 

 

「え?

 挫折、ですか…?」

 


「私自身の話をするね。

 

 もう知ってる通り、
 私は総合職で結構バリバリやってて

 

 この事業所に来たのも

 3年後に本社に戻って
 課長になる前提の転勤だったの。

 

 丁度今のあなたと

 同じくらいのポジション。

 

 なのに、

 ここで夫に出会っちゃったの」

 

 

「そうですか…

 ご主人のお仕事って?」

 


「今も同じだけど、大学の研究者。

 

 でもこの人って思っちゃったのよ。

 

 だから私から逆プロポーズしたの」

 


「あ… 私もです(笑)」

 


「やっぱ似てるね私たち(笑)

 

 で、夫に合わせる選択しか

 頭に無かったから

 

 上司に

 ”地域限定社員になりたい”

 って言ったら
 当たり前だけど

 ”バカじゃないか”と(笑)

 

 出世を棒に振って何考えてんだって。

 

 でも押し切ったわけよ」

 

 

「押し切っちゃったんだ…」

 


「そう。

 だけど思ったよりキツかった。

 

 まず、今までやってた仕事を
 職制上任せられないって言って
 全部取り上げられた。

 

 次に、私が1番下っ端になったけど
 それまで私が上司だったからなのか
 誰も私を使えなかったの。

 

 で、しょうがないから

 秘書になったって訳」

 


「あぁ…

 それキツいですね…」

 

 

「うん…

 確かにその時はキツかった。

 

 何がキツいって、

 自分の努力だけじゃ
 どうしようもないことだったから。

 

 だから私はその時

 ”挫折感”を感じてたの。

 同じじゃないかもしれないけど…

 

 私ちゃんも

 そうだったんじゃないかって。

 夫さんと上手くいかなくなったけど、
 それは

 自分でコントロールできるものじゃない

 

 どうしようもないから”挫折感”を
 感じたんじゃないかなって。

 

 で、それを埋めようとして…

 

 こんなこと言って悪いけど

 目の前にある楽な方に

 縋ってしまったんじゃないかな…」

 

 

 

なるほど…

確かにあの時

私は感じたことない感覚だった気がする


”挫折”自体

私が感じたことなかったからかも…

 

 

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