「ただいま~…」
誰もいない部屋に帰り電気をつける
殺風景な1ルーム
必要最低限の家電とソファーベッド
今日も慣れない業務で疲れ切った体
受け止めてくれるのはソファーだけ
「あぁ… 化粧落とさなきゃ…」
そう思いながらも
横になった体を動かす気にならない
天井を見上げながら頭をよぎる
「なんでこうなったんだろう…
いったいあれは
なんだったんだろう…
いったい
どこで間違えたんだろう…」
何度も何度も繰り返し考えて
それでも出なかった答え
スマホに手を伸ばす
着信もメッセージも無い
分かっているのに落胆しながら
写真フォルダを開く
見なければいいのに見てしまう
過去の幸せだった記録…
この頃になって
ようやく私は
過去の自分に向き合いだした
初めての土地で未知の業務
無我夢中で取り組むうちに
余分なプライドは無くなり
学ぼうという姿勢が板についていた
それが良い方に転んだのだと思う
自分で言うのもなんだが
私は常に”勝って”いた
学生時代は成績上位だったし
告白して振られたことは無い
今の会社に入っても
主任昇格は同期トップグループで
マネージャー任命も第1選抜だった
さらに
夫は超大企業勤務のエリート
絵に描いたような
”勝ち組”だったと思う
夫との出会いは
主任研修の1つであった
コンサル主催の外部研修
2泊3日の集中研修だったのだが
そこで夫と同じ班になり
集団ディスカッションや
研修レポート作成を一緒にやる中で
お互いに惹かれあい
連絡先を交換
夫の業務に対する姿勢は
研修で知っていたが
プライベートでもスマートだったので
私の方から告白し
最終的に逆プロポーズ
結婚式は盛大なものだった
だけど
すれ違いになって
私は最悪の過ちを犯した
思い返してみると
結婚生活や妊活ですれ違ったこと
それが原因だっていうのは
分かるんだけど
なぜあそこまで
私がおかしくなったのか
どれだけ考えても分からなかった
答えの出ない問題に悩みつつも
秘書業務は
なんとかできるようになってきて
秘書ローテーションにも入れた
しかし
やっと業務に慣れた頃
私の過去の過ちが
再び私の傷をえぐることになる
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遅過ぎた後悔 本気で好きだった 身体を許す時 歪んだ猜疑心