翌日の早朝

 

私の実家から連絡が来た

 


「夫くんから連絡があった。
 本当なのか?」

 


怒りに震えた父の声…

 


「あ…

 何を聞いたのか分からないけど
 たぶん全部本当だと思う…」

 


「…今すぐ帰ってこい!
 ちゃんと自分の口で説明しろ!」

 

 

私の実家までは電車で1時間ぐらい

行けないとも言えず
重い足取りで実家に向かった

 


車窓には

 

私の憔悴した顔が映ってる

 


(ひどい顔してるな…)

 


まるで現実感のないまま

 

車窓に映る自分を

他人事のように見ていた

 

 

駅前のロータリーを見渡したけど
親は迎えに来てくれなかった

歩いて帰れない距離じゃないけど
とてもじゃないけど歩く気になれず
タクシーに乗って実家へ向かう


玄関を開けて「ただいま…」と言ったが
何の返事も無い


家の中に入ると
両親が待ち構えてた

 

 

「座れ…」

 


父の低く怒りに満ちた声

 

逃げ出したいけど

どうしようもない

 

言われるがまま

両親の前に正座した

 


「まず、お前の口から説明しろ」

 


ヤバいな…

これ…

狼狽した私は
ここで致命的な失敗をしてしまう

 

 

「夫と妊活のことですれ違いになって…

 そんな時に同僚が相談に乗ってくれて…

 いつの間にか
 その人と浮気しちゃってました…

 それが夫にバレて…

 離婚を言い渡されました…」

 

 

無意識だったけど

 

自分のお花畑には言及せず

 

微妙に

夫や浮気相手に責任があるかのような
言い回しをしていた私

 

ここでも私は
自分のことしか考えていなかった


「…それだけか?」

 


父の方を見ると
顔が真っ赤になっている

 

 

「どんな説明するかと思ってたら…
 お前がここまでバカだと思わなかった…」

 


そう言いながら
父が私の前に出したもの

不倫調査報告書と
昨日交わした合意書の写し

 

そして
DVDが1枚

 


「このDVDには

 昨日のお前の様子が入ってる」

 

 

昨日

 

夫は家を出た後に

私の実家へ直行

 


私の両親に

 

「自分の至らなさが原因で
 誠に申し訳ございません」

 

と頭を下げ

 


すでに用意していた
調査報告書や合意書の写しだけじゃなく

 

持参した夫のノートPCで
私とのやり取りの録音データを
その場でDVDに落として手渡していた

 

 

「肝心な部分を

 自分から話そうとせず

 

 自分の親まで

 騙そうとするなんてな…」

 


「あ、そんな騙すなんて…」

 


「…もういい!
 良く分かった。

 

 もうお前は私の娘じゃない。
 二度とこの家に来るな!」


そのまま私は

 

実家から追い出された

 

 

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