週末の昼下がり

夫と彼と奥さんの3人がやって来た


リビングに座ると

 

奥さんが口火を切った

 


「こないだ会社で久々に見かけたけど
 改めて、お久しぶり。

 

 ずいぶん人の旦那と
 好き勝手やってくれたみたいだね?

 

 よく同期の嫁がいる旦那に手を出せるわ。

 

 アンタ正気?」

 

 

ちょっと私もムッとしたので
よせばいいのに反論した

 


「旦那が浮気するぐらいすれ違ってたのに
 全部相手のせいにするって何?

 

 アンタこそ

 ちゃんと自分の旦那捕まえとけよ」

 


「は? すれ違い?
 アンタおめでたいね~(笑)

 

 コイツの言ったことホントだと思ってんの?」

 

 


え? それもウソなの…?

 


横の彼を見たらうつむいてる…

 

 

「ねぇ、ちょっと!
 下向いてないで何か言ってよ!

 

 全部ウソだったの?

 

 …ウソだったの?」

 


再び奥さんが笑い出す

 


「ちゃんと言ってあげなよ~(笑)
 じゃないとストーカーされるよ?」

 


すると彼が

下を向いたまま話し出した

 


「ホントにゴメン…

 

 お互い大人の関係だと思ってたのに

 

 まさか君が

 ここまで本気になるなんて…」

 

 

 

 

 

それを聞いた瞬間

私は床に崩れ落ちていた

 

 

 

 

 

「もういいだろ。
 ようやく現実が分かったみたいだし…」

夫はそう言いながら
大きくため息をつきつつ

テーブルに紙を広げた

 


私と彼との不倫に関する合意書だった

 


「お前も

 これ以上引きずっても仕方ないだろ。

 

 彼さんも奥さんもこれで合意してるし
 お前もこれで終わりにしてやるから

 

 中身を確認したら
 さっさとサインしてくれ」

 

 

合意書の内容は…

・私と彼はそれぞれの配偶者及び
 相手方の配偶者に対し100万円ずつ支払う

・本件不貞を起因として離婚する場合
 有責配偶者は離婚における
 財産分与の権利を放棄する

・本件合意後に私が出産した場合
 夫又は彼の実子であることが確認されても
 夫又は彼が認知しないこと及び
 養育費の支払いをしないことを私が認める

 

 

 

完全に私の独りよがり

その現実に直面した私は
何も考えられなくなり

言われるがままサインした


そして

夫から差し出された離婚届にも
素直にサインした

 

 

あれ?

彼のとこは離婚しないのかな…


離婚届にサインしながら奥さんを見ると

「ウチは離婚しないわよ。
 離婚して自由になんかさせないし、
 きっちりATMとして働いてもらうから」

彼は相変わらず下を向いたままだった

 

 

 

 

私がサインし終わったのを見て

 

彼と奥さんと一緒に
夫も出て行こうとしたけど

思わず夫を引き止めた
 

 


「お願いです…


 ちゃんと話をさせてください…」

 

 

【BACK NUMBER】
遅過ぎた後悔 本気で好きだった 身体を許す時 歪んだ猜疑心

初めての挫折 優しさの罠