翌日出社すると
なんだか周囲の様子がおかしい

みんな 遠巻きに私を見ながら
私と目が合いそうになると目を逸らす

誰も私に声を掛けてくれない

(え… ウソでしょ…
 昨日の今日でもうバレてんの?…)

疑心暗鬼のまま始業時間を迎えたら
部長から社内SNSで

 

「○○会議室に来るように」

 

 

 

 

 

あ…

 

終わったな…

 

 

 

 

 

案の定

部長は全て知っていた

彼の奥さんは総務の人で
私の部長は奥さんの元上司

(さすが総務 手際が良いな…)

不倫がバレていたショック
そして今日
目の前で起きていること

混乱していて現実味を感じられずに
奥さんに対して変な感心までしていたら

 

部長が怒りに満ちた声で私に告げた

 

 

「こんな事を起こした当事者を
 同じ環境で就業させる訳にいかない。

 

 君には本社から異動してもらう。

 

 不服なら辞表を出してもらって構わない」

 


こんな状況なのに
部長の声も遠くに感じられて

何も考えられなかった私は
力無くカラ返事していた

 


「あ… はい…」

 

 

「異動先は○○事業所を考えている。

 

 手続き次第辞令を出すから
 早急に引継ぎを始めるように」

 


示された異動先は
500㎞以上離れた事業所…

一瞬どうしようかと迷ったけど

 

何も考えられなかった私は

そのまま受け入れた
 

 

「分かりました。
 ご迷惑をお掛けしました」

 

 

何とも言えない気持ちで席に戻ると

 

私をあのBBQに誘ってくれた

同僚が寄ってきた

 


「なんか…

 大変なことになったみたいだけど
 私さんどうなったの?」

 


「あ…

 ありがとう…
 辞令出るから分かると思うけど
 ○○事業所に異動になったよ…」

 


「そっか…

 なんかあったら連絡してね」

 


一瞬

彼はどうなったのか

彼と同じ部の彼女に聞きたくなったけど

 

今聞くことじゃないなと思ってやめた

 

 

彼女が戻っていった先を
何となく目で追ってたら

 

 


彼の奥さんがいた

 

 


(そうか…

 あの子って元総務だったな…
 彼女を使って様子伺いしたのか…)

 


他人事のように思ってたら

 

急に刺すような視線で私を見た

 


慌てて目を逸らし
もう一度目をやると

 

もう奥さんの姿は無かった

 

 

 

あ…

この感じ…

私って今
大変な状況になってるな…

 

 

 

 

昨日は夫から
冷酷な現実を突きつけられ

今日は会社で
自分のした報いに直面


パニックになっていた私は

 

夫に言われたように冷静になるなんて
全然ムリなまま

どこが現実味を感じられず
呆然としていた

 

 

 

 

そして

あっという間に週末を迎えた


ここでようやく

私は本当の現実を知ることになる

 

 

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