「え…?

 彼と…

 奥さんも?」

 


「初対面じゃないだろ?
 奥さんも同期なんだってな」

 


全身が震えだした

 

マズイ… マズイ…

 


「どうした? さっきまでの勢いは」

 


夫の声も全く耳に入らない

 

お互いの相手に全部バレてたなんて…

 

 

「…どうやら

 現実に戻ったみたいだな。
 一度冷静に

 自分の置かれた状況を考えてみろ」

 


そのまま夫は外出しようとした

私は慌てて夫を引き止めた

 


「待って…

 お願い…
 待ってください…」

 


夫は私の手を払いのけ

 

今まで見たことないような冷たい目で
私に告げた

 

 

「お前に踏みにじられながらも

 それでもお前に差し出した俺の手を

 振り払うどころか

 こんな裏切りまでしでかしておいて…

 許されるわけないだろ」

 

 

そのまま夫は出て行った


私は夫が出て行った玄関を見ながら
呆然としていた

「どうしよう…
 会社にバレちゃう…」

この期に及んで私が心配していたのは
自分自身のことだけだった

 

 

ようやく我に返った私は

彼にメッセージした

「全部バレてたみたい…
 ねぇ どうしよう…」

だけど彼からの返信は無い

 


その代わり

 

しばらくたってから
1通のメッセージが届いた

 


「私ちゃん久しぶり。
 ウチの旦那が

 ずいぶんお世話になったみたいだね~
 週末、楽しみにしてるね」

 

 

 

 

ここで私は


自分だけがお花畑にいたことに


ようやく気付いた

 

 

 

 

彼が私に寄り添ってくれたこと

私にかけてくれた優しい言葉


「お互い出会う順番間違えたね」


あの言葉は…

口先だけのもの

私を落とすためだけの言葉だったんだ…

 

 

 

 

 

何やってたんだ私…

 

 

 

 

 

リビングに飾られた夫との写真

今まで目にも止まらなかったのに
その写真が私に突き刺さる


「何やってたんだ私…」


私は号泣していた

 

 

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