「ただいま~…」

誰もいない部屋に帰り電気をつける

殺風景な1ルーム
必要最低限の家電とソファーベッド

今日も慣れない業務で疲れ切った体
受け止めてくれるのはソファーだけ

「あぁ… 化粧落とさなきゃ…」

そう思いながらも
横になった体を動かす気にならない

 

 

天井を見上げながら頭をよぎる


「なんでこうなったんだろう…

 いったいあれは
 なんだったんだろう…

 いったい
 どこで間違えたんだろう…」


何度も何度も繰り返し考えて
それでも出なかった答え

 

 

スマホに手を伸ばす

着信もメッセージも無い

分かっているのに落胆しながら
写真フォルダを開く


見なければいいのに見てしまう

過去の幸せだった記録…

 

 

 

歯車が狂い始めたのは
結婚して3年目の頃


新婚気分が無くなったのもそうだけど
お互いが徐々に責任ある仕事が多くなり

帰宅が遅くなったり
出張で家を空けたりしているうちに
 


自然とすれ違うようになり
会話が減っていった

 

 

それでも最初のうちは
お互いに何とか2人の時間を作ろうとしたり
夫も私も頑張っていたと思う

だけど
なかなか思うようにいかないもどかしさと
2人の時間が少なくなったことの寂しさから

 


私は夫に対する不満が重なっていった

 


でもそれは

 

夫も同じだったみたい

 

 

せっかく2人の時間が合っても
なぜか口から出てくるのは相手への嫌味

しなくてもいいケンカ

それが重なり
やがて会話自体が億劫になっていった


完全に悪循環

 

 

ケンカの原因も色々あったけど

やがて1つに集中した


それは
私たちの子供について


いわゆる”妊活”についてだった

 

 

当時の私は30歳を超え
そろそろ欲しいと思っていたんだけど

夫は「自然に任せよう」と言うばかり


もちろん夫にも言い分があった

なぜなら夫は
私が拒まない限り

毎晩でも求めてきていたから

 

 

だけど私は
逆にこの状況で妊娠しないことに
少なからず危機感を覚えていた


もしかしたら
どちらかに問題があるかもしれない

だから早くちゃんとしたいのに…


なかなか夫には私の思いが伝わらなくて
イライラが最高潮になっていた

 

 

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