「お久しぶり(笑)」

「なんだよその挨拶(笑)
 先週会ったばかりだろ」

「だって前みたいに毎日会えないじゃん。
 それにその前は
 1か月以上会ってないって分かってる?」

「しょうがないだろ~
 もう俺は学生じゃないんだからさ」

 

 

 彼と付き合ってもう3年

 大学のサークルで声を掛けてくれた彼と
 付き合うまでに時間はかからなかった

 彼は4年生で私は新入生
 サークルの中心にいた彼を
 私はまぶしく見ていただけだった

 そんな彼が
 なぜか私を気に入ってくれて

 彼の「付き合おう」に断る理由は無かった

 

 彼は大手企業に就職が決まってて
 単位もほとんど取っていたから
 遊ぶ時間はいっぱいあった

 おかげで私は
 楽しい学生生活を送れた

 優しい彼と一緒に
 いっぱいデートして
 いっぱい遊びに行って

 最高の大学1年生だった

 

 

 だけど
 彼が卒業して就職したら
 当たり前だけど会う回数が減った

 しょうがないって分かってるけど


 彼が別世界に行っちゃったみたいで


 とても寂しかった

 

 

 それでも彼は
 忙しい中でも時間を作ってくれて

 私を楽しませてくれた

 だから私も
 彼の重荷になっちゃいけないって思って

 自分の寂しさを出さないように心掛けた

 それに
 社会人になっても私と付き合ってくれている
 彼に感謝していた

 

 

「ゴメンね。分かってるよ。
 忙しいのにありがとう!」

「いやこっちこそゴメンね。
 寂しい思いさせちゃってるよね…」

「大丈夫だよ!
 だって私は女子大生だもん(笑)」

「羨まし~な~(笑)
 ま、あと2年したら
 俺の気持ちも分かるでしょう」

「え~… ヤダ(笑)」

 

 

 彼との何気ないやり取り

 言葉の端々に彼の優しさを感じて
 私はいつも笑顔でいられる

 彼と付き合えてよかった

 彼と一緒にいられれば
 私はいつも幸せでいっぱい

 


 彼のいない生活なんて考えられなかった

 

 

 

 

 この頃の私は

 会えない寂しさもあるけれど
 彼との未来をずっと思い描いていた

 私が社会人になって
 しばらくしたら結婚して…

 お互いの通勤によさそうなところに住んで

 やがて子供ができて…

 そんな「普通」の未来を想像していた

 

 

 

 

 

 私が

 自分でそれを台無しにするなんて

 想像すらしていなかった

 

 

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