夫と会ってから2週間ほどした頃
弁護士さんから連絡が来た

「夫さんの条件が固まりましたので
 こちらにお越しいただけますか?」

 

 

 


ついに来た…

 

 

 


弁護士さんに指定された日に
私は1人で向かった

付き添いを申し出てくれた両親には

 

「ちゃんと自分で受け入れてくる」

 

と言って断った

 

 

久しぶりの弁護士事務所

 

応接室に通されて
初めて1人で弁護士さんを待った

 


どんな条件でも受け入れる

 

それだけのことなのに
私はとても緊張していた

 


「お待たせしました」

弁護士さんと助手の方が入ってきた

 


どんな条件なんだろう…

 

緊張したまま弁護士さんの言葉を待った

 

 

弁護士さんから離婚条件が提示された

・慰謝料請求は無し
・財産分与は無し
・実子の親権は夫とする
・私への養育費請求は無し

・夫に譲渡するとした不貞行為の相手方からの
 慰謝料の受け取りを拒否するとともに
 当該慰謝料は私が受け取ること


・私及び私の親族は夫、実子及び夫親族への
 連絡並びに面会を禁じる
 ただし実子が面会等を希望する場合は
 この限りではない

 

 

「以上が夫さんから提示された条件です。
 何かご質問はありますか?」


「…いえ、何もありません。
 ありがとうございました」


「夫さんからは1か月後でのお返事を
 希望されています。
 それでよろしいでしょうか?」


「はい。分かりました。
 ただ… できることなら根拠と言いますか
 この条件の夫の考えを教えていただくのは
 可能でしょうか…?」

 

 

「はい。もちろん大丈夫です」


「ありがとうございます。お願いします」

 


「では個別にお話しする前に
 夫さんの基本的なお考えですが…

 これ以上私さんと関わりたくない

 

 だから慰謝料や養育費など
 私さんと継続して関わる事項は
 すべて無しにする

 ということです」

 

 

 

あぁ…

 

やっぱりそうなるか…

 

 


私は夫と最後に会った日を思い出して
夫がこの条件を示したことに納得した

私からの慰謝料すら拒否するほど
夫に深く消えない傷を負わせたんだ…

 


「…私さん?

 続けてよろしいですか?」

考え込んで無口になった私に
弁護士さんが気を遣ってくれた

 


「あ… すみません。
 夫の考えが良く分かりました…」

 

 

「そうですか… では…」


「あ、もう大丈夫です。
 この条件で合意します」


「…はい 承知しました。
 ではこちらの書面をお持ちいただき
 1か月後に当事務所までお願いします」

 


「いえ、この場でサインしたいと思います。

 

 早く夫の苦しみを楽にしてあげたいので
 時間を掛けたくありません」

 


もう私にできることは
夫の望むようにすることだけなんだから…

 

 

「残念ですが、
 今日サインいただくことはできません」

 

「え? それはどうでしてですか?」

 

「夫さんから
 必ず1か月後と言われていますので…」

 

「あ…」

 


そういうことか…

 

直ぐに楽になんかさせないってこと
私に戒めの期間を設けたってことかな…
 

 

「分かりました。では改めてお伺いします」

 

 

弁護士事務所を出た私は
とりあえず母にメールした

「今終わった。
 ちょっと1人で考えたいから
 帰るの遅くなる」

 

 


あと1か月…

 


ただ反省するだけじゃだめだよな…

 

夫や息子たちのために

何ができるんだろう

 


私にできること


もう一度考えてみよう…

 

 

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