夫は母親に感謝した

自分でも気付かなかった

 

いや気付いていたけど
言葉にできなかったものが

はっきり見えた

 


許した先は地獄なんだろうか…

 

それとも…

 


「今」のことしか考えてなかったので
「将来」を考え出すと

 

何が正解なのか

分からなくなってしまった

 

 

とりあえず会ってみよう

 


この考え自体
ものすごく浅はかだった気がした

そう仕向けてくれたのは友人

 

 

たぶんあいつは
今までいろいろ見てきた経験で
俺次第でうまくいくと思ったんだろう

もしかしたら
一番客観的で的確な意見かもしれない

 


だけど…

 

 

 

 

夫は再び迷い始めてしまった


こんなことをしでかした私を
 

信頼しきっていた夫を裏切った私を
 

夫は許そうとしていた

 

これも

夫の優しさのせいかもしれない
 

夫の悩みは

 

「自分が耐えられるか?」

 

「かえって私を苦しめることにならないか?」

 

の2つ

 


自分が犠牲になることが

前提になっていた

 

 

 

 

 

その頃の私は
 

ただひたすら

弁護士さんの連絡を待っていた

 


家でじっとしたまま
TVもほとんど見ず

 

思い出したように
スマホの家族写真を眺めて

 

申し訳なさでいっぱいになり
繰り返し泣いていた

 


いつの間にかたどり着いた答え

「私は幸せになっちゃいけない人間だ」

いつ何が起きても

不思議じゃない状況だった 

 

 

そんな私を
両親はそっと見守ってくれてたけど

 

さすがに心配な状況の私を見て

 

「ちょっと外に出てみようか」

 

と連れ出してくれた

 


行先は近所のコンビニ

 


不思議なことに
気持ちが晴れていくのが分かった

 


歩くって気持ちいいな…


久しぶりに前を見た気がした

 

 

それから私は
自分から外出するようになった

 


ちゃんと前を見て歩く

なんとなく
前向きな気持ちになった気分

 


すると

 

今まではただ反省ばかりしてたけど

 

夫や息子たち

義両親や店長さんなど
 

私が迷惑をかけた人のことを

 

その人たちの気持ちを

 

考えるようになった

 

 

みんなが

私に求めることってなんだろう…

 


私がしなくちゃいけないこと

たぶんみんな違うと思うけど
その求めに応じられるようにしよう

 


だから

 


私に2度と会いたくないというのも
私が応じなくちゃいけないことなんだ

 

謝らせて欲しいのは
私の気持ちの押し付けだ…

 


そんな風に考えるようになった

 

 

 

そうだ…
 

まずお礼を言わなくちゃいけない人がいた

 

 

そう思ったら
自然と足が駅に向いていた

 


最寄り駅からは結構な距離だけど
気持ちが高揚していた私は
あっという間にお店の前にいた

「店長いるかな…
 他の人に見られるのもな…
 普段着みたいな恰好で来ちゃったしな…」

いざ顔を出そうとした時
自分の過ちが頭に浮かんで躊躇した

 

 

いや

 

これも私の受けるべき罰だ

 

ちゃんと顔を出して

 

ちゃんと謝ろう

 

ちゃんと店長にお礼を言おう

 


そう決心してお店へ進んだら
ちょうど店長が外に出てきた

 


「店長!」

 

声を掛けられた店長の顔が驚いている

小走りに駆け寄ると

 


店長の後ろに夫がいた

 

 

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