店長さんの話を聞いて
夫はこれからのことを考えた

「う~ん… やっぱあいつに相談するか…」

夫の友人に弁護士がいた

 

さすがに友人に依頼するのは
気まずかったこともあり

 

以前に面識のあった
友人と同じ事務所の弁護士に依頼していた

話が大きくなってきたので
まずは友人に相談することにした

 

 

「お疲れさん。

 どうした?相談って。

 奥さんの件なら俺が聞かない方が良いだろ」

 


「いや、実はな…」

 

 

夫はこれまでの経緯を友人に話した

 


「なぁ… どう思う?」

 


「いろんな話がごっちゃになってるなぁ…

 

 まず会社の件だけど
 これは労働法関連で行けそうだな。

 

 後は彼と彼の奥さんへの慰謝料請求か…」

 


「え?彼の奥さんにも?どういうこと?」

 

 

「彼の奥さんのしたことだけど…

 まずお前の家に押しかけてきて
 不貞行為の事実を子供にまで伝えた。

 

 確かに直接ではないけどね…

 だけどこの行為は
 子供を傷つけるに十分な行為なので
 親として慰謝料請求できると思うな」

 


「なるほど、言われてみれば…」

 


「それにお店で騒いだ行為だけど

 これもお前の奥さんに対する
 名誉棄損が成立するんじゃないかな」

 

 

「え?事実を言っただけでもダメなの?」

 


「だって不倫なんてプライベートなこと

 本人の許可なく第三者に広げて
 いい訳ないってわかるだろ?

 

 しかもその情報ってネガティブなものだから
 本人に対する社会的評価を下げさせる

 

 つまり貶める行為ってこと」

 


「でもさ、マスコミとかネットとかで
 不倫のバッシングとかあるけど…」

 


「あれは一般的に世に出回っている情報。
 公知の事実って言うんだよ。

 

 だから今回のような
 プライベートなことをやったらOUT」

 


「そうなんだ。知らなかったよ」

 


「それともう一つ…」

 


「え?まだあんの?」

 


「その奥さん…

 お前を騙してるな」

 


「え?俺を騙して何の意味があんの?」

 


「私さんを陥れるためさ。

 実際、奥さんの話聞いてお前どう思った?」

 


「いや… 絶対許せないって…」

 


「そう、それが狙い。

 そもそも私さんから誘ったと言ってるけど
 何の根拠も証拠も無いだろ。

 

 むしろ自分の夫が常習犯って知ってるから
 男からって分かってるだろ、絶対。

 ここからは推測だけど…

 奥さんは彼のことが憎み切れないから
 相手のせいにしたいだけじゃないかって。

 

 本当に罰を与えたいんなら
 社長の娘なんだからお父さんに頼んで
 会社をクビにして離婚すりゃいいだけ。

 

 それで慰謝料請求して終わりじゃないの?

 普通はそうすると思うよ。

 

 なのに本社勤めにするって…
 罰にも何にもなってないじゃん」

 


「確かに言われてみれば…

 頭に血が上っててそこまで気付かなかった」
 

 

「だから奥さんの本当の狙いは
 私さんを絶望に追い込むことだけだった。

 そう思うけど、俺は」

 

 

「なるほどなぁ…

 だけど妻が浮気したのは許せないよ…」

 


「まぁ…

 そこはお前の気持ちだから…

 そうだ、女衒って言葉は知ってる?」

 


「え?何それ知らない」

 


「本来は違う意味なんだけど
 女を騙して食い物にする輩のこと。

 ヒモって言ったら分かりやすいかな?」

 


「それが妻の相手だったってこと?」

 

 

「うん、そんな気がするな…

 

 実は弁護士事務所って
 娘が騙されてる、助けてくださいって
 依頼が多いんだよ。

 そういう類の男って
 とにかくマメで口がうまいんだ。

 

 知らないうちに女を操って
 男のことを好きだと錯覚させる…

 

 一種の洗脳と言ってもいいかな。

 だから詐欺師と言ってもいいかもしれない」

 

 

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