私が黙り込んだことに気付いた父

「すまん。こんな話をするつもりじゃ…」

 


「いいよ、気を遣わなくって。

 

 私が裏切ったのは事実だもん…

 

 それに
 男の人が女の浮気をどう考えるかって
 すごく参考になった」

 


「いや…

 夫くんがどう捉えてるかは
 お父さんにも分からないから

 

 もしかしたらってことも
 あるかもしれないよ」

 

 

「ううん。
 たぶん夫はお父さんの話した通りだと思う。

 実は夫たちが家を出る少し前に
 夫や息子たちの様子が変わったの。


 みんな私を避けてた。

 

 耐えきれなくなって夫に尋ねたけど
 とても冷たい反応だった。

 お父さんの話を聞いて分かった。


 母親が浮気するって
 いかに最低なことをしたのかって…」

 

 

両親は黙って私の話を聞いていた

 

2人とも下を向いたままだった

 


「だから私…
 夫の手紙の通りにするよ。

 

 それが私にできる
 たった一つの償いなんだから」

 


「そうね… そうよね…

 

 仕方ないことよね…」
 

 

 

私は離婚することをを受け入れた

 

 

 

「だけど、
 このままって訳にいかないだろ?

 

 先方の親御さんに謝りにいかないと」

 


父が気付いたとおりだった

 


「でも連絡するなって…」

 


「弁護士さんに連絡するだろ?
 その時に聞いてくれないか。

 

 先方の親御さんに謝罪したいって」

 


「うん… 分かった」

 

 

今まで義両親とは良好だったと思う

 

さすが夫の親だな、と思うくらい
いつも私に優しく接してくれた

 

 


そうだった

 

私は義両親も裏切ったんだな…

 

 


他にも今は気付いてないだけで
色んな人を裏切ってるんだろうな

本当に
なんてことをしちゃったんだろう…

 

 

後悔しかなかった

 

 

 

部屋に戻って再び横になった

だけどさっきまでと違って
全く眠たくなることは無かった

色んなことが

次から次へと浮かんでくる

 

そのたびに申し訳ない気持ちになり

 

後悔ばかりしていた

 

 


やがて私は

 

過去の自分の恋愛を思い出していた

 

 

 

初めて付き合った彼のことから始まり

 

夫の前にお付き合いした彼までと

 

そして…

不倫相手の彼

 


1人ずつ思い出して気付いた

 

夫以外の男は

みんな同じパターンだってことに

 


最初は猛烈にアピールしてきて
付き合ってる時は私に甘えまくり

 

だけどしばらくすると

 

他の女のことが好きになって
突然冷たくなって捨てられる…

 


笑ってしまうほど

同じパターンだった

 

 

同時に気付いた

 

私から好きになった男は
夫以外に1人もいない

 

 


そうか

 

そうだったんだ

 

 


私は男に求められることが嬉しくて

それに応えてあげたくなってしまう

 

その気持ちを「好き」だと思っていた

だけど過去の男たちは
ただ単に私とシたかっただけだ

 

だから

その場限りの甘い言葉ばかり言って
私に飽きたから捨てていったんだ

 

 

なんのことはない
 

私の恋愛に対する勘違いが原因だったんだ…

 

 

だから
 

あの常習犯を受け入れたんだ…

 

 


気付いて

 

心の底から自分が嫌いになった

 

 


「バカな女だ… 私…」

 

 


眠れないけど涙は出てこなかった

 


「涙… 枯れたな…」

 

 

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