いつの間にか記憶が飛んだ私

気が付くと知らない部屋に寝ていて

 

横には

さっきいた男子の1人がいた

 



私は記憶のないまま

 

「初めて」を奪われていた

 



現実を目にした私は
思わず泣き出してしまった

 

「あ、起きたんだ」

私が起きたのに気付いた男子も起きてきた

 

泣いている私に

「初めてだったんだね…
 なんかゴメンね…」

と申し訳なさそうに言った

「俺の部屋に来る?って聞いたら
 いいよ~って言ったから…
 まさか初めてだと思わなくて…」

 

私はとにかく早くその場を離れたくて

 

男子の声に返事をすることなく
すぐに服を着て自分の寮に帰った

 

 


まさかこんな形で…

 

 


ショックのまま
泣きながら寮に帰ると

 

同室の子が起きていて
私を待ってくれていた

「大変だったね…」

そう言って私を抱きしめて彼女も泣いた

 

 

私が落ち着いたら
彼女が聞いたことを教えてくれた

 


どうやら今日の2次会

 

私を陥れるために先輩が仕組んだことだった

 


先に寮に帰った先輩たちが
大声で話していたため分かったそうだ

 


「大成功!あいつ酔い潰れて
 意識ないままお持ち帰りされてたわ」

「生意気だからいい気味だわ(笑)
 大体1年のくせにBチームなんて、ねぇ」

 

 

話していたのは
私と同じBチームの先輩

他の1年生のほとんどがいるのも気にせず
大声でわざと聞こえるように話していた

みんな唖然としていたけど

 

当たり前の話
誰も先輩を咎めることはできなかった

 


「ゴメンね、何もできなくて…」

 

「ううん、いいよその気持ちだけで。
 教えてくれてありがとう…」

また抱き合って2人で泣いた

 

 

布団に入り
少し冷静になった私は

初めてををあんな形で奪われたことより
先輩に対する怒りでいっぱいになった


この世界
嫉妬や妬みでの嫌がらせはある
 

そんなこと気にしてたらやってられない

だけど

 

さすがにこれは無い

 


「絶対に許さない」

 

 

 

翌日
私は監督にすべてを伝えた

 


さらに私は

 

「ちゃんとした処分がされないのなら
 警察に届け出ます」

 

と付け加えた

 


監督は私に対応すると約束してくれた
そして

 

「君にウチに来るよう声を掛けたのは私だ。
 責任を感じている」

 

と謝罪までしてくれた

 

 

そこからの動きは早かった

 


首謀者の先輩2名とあの男子は
退部はもちろん
警察に言わない代わりに、という条件で
大学も自主退学になった

他の2次会参加者たちも
未成年者である私に飲酒強要したことで
それぞれ処分を受けた

 


完全に「事件」なので
公にしないように大学側も動いたんだろう

 

 

思い通りの結果だけど

 

私の受けた心の傷は予想以上だった
 

 


このことをきっかけに

私は生まれ変わってしまった

 

 

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