1週間ほど経って夫が帰ってきた

「あ… おかえりなさい」

夫は答えず私の前に座って

 

「で?いつ出てくの?」

 

と聞いてきた

「そのことなんだけど…」

 

私は夫の前に正座した

 

 

「今まで本当にごめんなさい。

 

 謝って済むことじゃないけど
 ちゃんとあなたに謝ってなかった。

 

 だからせめて謝らせてください。

 

 本当にごめんなさい」

 


私は精一杯頭を下げ続けたけど
夫は何の反応もせずに
自分のバッグから封筒を取り出した

「離婚届。サインして」

 

 

目の前に差し出された封筒
その中には離婚届がある…

どうしても手が出せなかった
手に取ったら「終わり」だと思った

今更なのは分かってる

でも どうしても

夫と離婚したくない…

 

 

「いいかげんにしてくれない?」

 

夫が口を開いた

「これだけのことをしておいて
 夫婦でいられると思ってるの?
 俺をバカにするのも
 いいかげんにしてくれよ」


「バカになんかしてない
 本当に申し訳ないと思ってる
 ごめんなさい…」


 私は涙を流しながら謝り続けた

 

 

「いや、バカにしてるよ。
 考えてもみろよ

 結婚して5年たたずに完全拒否。

 

 男としての俺を強制終了させながら
 自分はやりたい放題。

 妻としての役割を完全拒否だけじゃなく
 勝ち組の給料あるのに貯金ゼロどころか
 借金まみれでお金の管理もできない。

 日中はゴロゴロしてるばかりで
 家事もろくにやらないし
 家の中はゴミ屋敷のように散らかり放題

 

 妻どころか家政婦にもならない。

 なのに俺が身を削る思いで稼いできた金で
 お前は浮気三昧して借金まで作って。

 そんなお前をなんで俺が?

 

 養わなきゃいけないの?

 

 教えてくれよ」

 


…何も言えなかった

改めて言葉にされると
私のクズさが良く分かる

 

 

ふぅ~と大きくため息をついて
夫は核心を突いてきた

 


「俺のこと愛してないんだろ?

 

 ただのATMだと思ってるんだろ?

 

 もうかんべんしてくれよ。
 いいかげん俺を開放してくれ」

 


ここまで言われても
私はただ「ごめんなさい…」と
泣きながら言い続けるだけだった

 

 

「形だけの謝罪なんていらないんだよ」

 

冷めた目で夫は
謝り続ける私を見下ろしていた

「謝るくらいなら最初からするなよ。
 どれだけ謝っても元には戻らないんだよ。

 お前…浮気してる時に
 俺に申し訳ないって1ミリでも考えたか?

 考えてないよな。
 だから浮気できるんだよな。


 だから浮気相手との子を
 平然と俺の子として産めるんだよな。

 

 俺にはその感覚が理解できないよ

 

 お前は俺が浮気してるって
 何の根拠も無く決めつけて
 さんざん俺を責め続けたけど、

 要するにお前は
 自分が浮気してるから
 相手も浮気してると思ったんだろ?

 自分がそういう人間だから
 他もそうだって感覚なんだろ?

 そんな人と一緒に暮らせるかよ」

 

 

【BACK NUMBER】
遅過ぎた後悔 本気で好きだった 身体を許す時 歪んだ猜疑心

初めての挫折 優しさの罠