しばらく呆然としていた私だったけど

 

次第に「なぜ分かったんだろう」
と疑問がわいてきた

 


もしかして…

 


消すように言われていたけど
何かあった時のために、と思って
残しておいた番号へ連絡した

 

 

「はい」

 

「あ、突然電話してスミマセン
 私です…」

 

「あぁ…」

彼の奥様に電話をした

 

もしかしたら何かのきっかけで
彼側からバレたのかと思ったから

「あなたの旦那さん、えげつない人だね~」

 

「え?それは…」

 

「ま~やられたわ」

そう言うと奥様は一気に話し始めた

 

 

 

彼の会社にスーツ姿の夫が現れた

 

彼の奥様が

「どちら様ですか?」

と言うと
 
夫は超大企業のロゴが入った名刺を出し
自己紹介で私の夫であることを告げた後

 

「この度は私の妻がご迷惑をおかけしました」

 

そう言って頭を下げた


「いえいえ、こちらこそ。
 お互い様ですから」

 

 

「恥ずかしながら
 最近になって知ることとなりました」

 

 

「そうでしたか…」

 

 

「ところで奥様。
 

 先ほどお互い様と仰いましたが
 全く違いますよね」


「は?それはどういう…」

 


「私は貴方の旦那様から
 未だに謝罪を受けていません」

 


「あ…

 彼は今外出していますから
 すぐ呼び戻し…」

 

 

「いえ、その必要はありません。
 私は奥様に用があって参りましたので」


「私に用って…?」

 

 

「私は貴方を告訴します」

 

 

「え? こ、く…そ?って…」

 

 

「貴方を訴えます」

 


「わ、私を訴える!?」

 

 

「貴方は妻と和解しました。

 

 しかしその内容は
 一方的に貴方が有利なものです。


 夫にだけは知られたくない、
 という妻の弱みに付け込み


 私にも彼に対し慰謝料請求できることを
 意図的に回避するため

 

 正常な判断ができない状態の妻を
 貴方は精神的に追い込み

 自分に有利な内容で和解させた。

 

 その証拠に和解書には
 妻が私に事実を話すことを禁じる内容が
 はっきりと明記されています。

 

 ありえませんよね?

 

 当事者同士を接見禁止にするだけじゃなく
 もう一方の利害関係人である私に
 その内容を伝えることを禁じるって」


「あ… いやそれはそういう…」

 

 

「他に何の意図があるというんですか?」

 

 

「…」

 

 

「貴方、私の妻で6人目だそうですね
 お金が勿体ないから自分でやったと」


「はい…」


「ならば当然のことですが
 

 私に慰謝料請求できる権利があると
 ご存じですよね?

 

 それを行使できないように
 貴方は妻を騙して和解した」


「…」

 

 

「ご存じですか?
 契約というのは当事者間が合意してれば
 どんな内容でもいい訳ではないんです。

 

 不法な内容はもちろんですが
 

 一方のみに有利な内容の契約というのは
 法的に無効なんです」


「え? 無効って…」


「それだけじゃありません。
 そんな不利益な契約を強要したことは
 刑事罰の不法行為の対象となります」

 

 

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