誰にも相談できなかった私は
数少ない裕福な知人を訪ねた

それは疎遠にしていた
遠縁の叔父さん

昔からなんとなく嫌だったので
付き合いを極力避けてきた

だけどそんなこと言ってられなかった

 

 

夫がうつ病になってしまったけど
お金が必要になった


だから300万円貸して欲しい

 


叔父さんは久しぶりに訪ねてきた私に
最初は怪訝そうな顔をしていたけど

 

私の目的を聞いて
微笑みながら「いいよ」と言った

 


「ところで…

 

 どうして夫さんが来ないの?
 病気で来れなくても連絡ぐらいねぇ」

 


しまった、と思ったが遅かった

 

そんな理由なのに
夫が一緒に来ないなんて不自然過ぎる

焦る私に叔父さんが追い打ちをかける

 


「言えない理由なんだよね、ホントは」

 


そう言いながら背後の金庫からお金を出し
私の前に置いて…

 

「いいよ、協力してあげる。
 だけど担保も無しというのはねぇ…」

 

 


そう言いながら

 

 

叔父さんは私に手を伸ばしてきた

 

 


私が叔父さんを毛嫌いしていたのは

 

何となく
私を「女」として見ていると感じたから

 


やっぱりそれは正解だったんだ

 

 

もう私は若くないし
ただの太った不細工なオバサン

 

その上、遠縁とはいえ血は繋がっている

にもかかわらず
そんな私を求めてくるなんて…

 


ここに来たことを心底後悔した

だけど
私に他の選択肢なんて無い

 

 

 

 

 

 

 

 地獄の時間だった

 

 

 

 

 

 

 

「お金はいつでもいいから。
 困ったらまたおいでね」

その言葉が終わらない内に
私は叔父さんの家を飛び出した

気持ち悪くて
帰るまでに何度も吐いた

自己嫌悪と後悔で
涙が止まらなかった

家に帰っても
夫の顔を見ることができなかった…

 

 

なんとかお金を用意できた私は
慰謝料を支払い
和解書にサインした

「彼との接触禁止」

 

わざわざ和解書に書いてあるけど
そのつもりだったから意味が無い

 


結果として
彼と終わることができたけど

 

その代償は大きかった

 


私の精神的ダメージはもちろんだけど

 

浮気してた時とは違う夫への申し訳なさが
容赦なく私を襲ってきた

 

 

 

浮気や不倫どころじゃない

 

私は「身体」を売ったんだ…

 

 


もうこれで私は
夫のことを責められなくなったな…

因果応報、自業自得ってやつか…

自分自身の情けなさに落ち込んだ

 


だけど

 

私のしてきた裏切りの代償は
まだ始まったばかり

 


精神的ダメージだけでは終わらなかった

 

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