たまたま夫が通院している時に
内容証明郵便が届いた

 


差出人は…

 

彼の奥様

 


見た瞬間に理解した

 

「バレたんだ…」

 


封筒を持ったまま立ちすくした

 

ついに恐れていたことが起こってしまった

 

 

「彼との不貞行為による慰謝料を払え」

 

請求金額は300万円と彼への接触禁止
そして彼の奥様への謝罪

彼との逢瀬で浪費していた私は

勝ち組であるはずなのに
貯金がほとんどできなかった

夫は私にお金の管理を任せっきりだったから
今までなんとか誤魔化していた

 


300万円なんて用意できない…

 

 

とりあえず
連絡先に電話すると奥様が出た

内容証明が届いたこと

 

「申し訳ありませんでした」と謝罪を伝え
慰謝料を払う目途が無いことを伝えた

 


奥様はそれには答えないで

 

今は夫が横にいるのかと尋ねられた

 

どうやら夫が休職中なことも
すべて奥様は知っているようだった

 


「今は病院に行ってます」


と答えたら

 

「次の夫さんの通院日にお会いしましょう」

 

 

 

翌週の夫の通院日
彼の自宅に行き彼と奥様と対面した

てっきり弁護士も一緒なのかと思ったので

 

「弁護士さんは…?」

 

「依頼してません。お金が勿体ないので
 私が自分でやることにしました」

 


なんと 私で6人目だそうだ

 


なるほど、だから自分でできるんだって
妙に感心してしまった

 


そして彼の「お前も…」の意味が分かった

 

 

「もう全部整理できたと思ってたのに
 まだ浮気相手がいたなんてね。

 

 しかも子供まで産ませるなんて…

 

 何?不妊の私への当てつけ?」

 


そう言って奥様は横の彼を睨みつける

 

彼は何も言わず下を向いているだけ
 

 

続けて奥様が机の上に広げた証拠は
彼の仕事部屋での情事の様子…

 

言い逃れなんかできる状況じゃない

彼の異変に気付いた奥様が
監視カメラを設置したそうだ

 

 

彼の異変

 

それは彼が私に執着し始めたことで
不自然に仕事を離れるようになったこと

 


だからか、と理解した

無理やり時間を作ってまで
私に執着しようとしたのは

 

他の相手を失ったからだったんだ

私に関心が芽生えたんじゃなくて

「金ヅルでもあった私というセフレ」を

失いたくなかっただけなんだ…

 

 


私もクズだけど

 

私が本気になった彼もクズでした

 

 

 

「で?慰謝料払えないって話だけど?
 どうするつもりなの?」

変な感傷に浸っていた私は
奥様の言葉で現実に引き戻された

「一括では無理なので分割で…」

 

私が言いかけたら

 

「夫さんに相談するしかないわねぇ」

 

 


一気に血の気が失せた

 

 

体が震えだしたのが自分でもわかった

 

 

 

「払います!払いますから
 夫にだけは伝えないでください!
 お願いします!」

土下座しながら何度も懇願した

「お願いします…」

 


しばらくの沈黙の後に奥様は

 

「1か月だけ待つわ。
 でも守れなかったら覚悟してね」

 

 

自宅に戻った私は
放心状態だった

「お金どうしよう…」

 

 

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