そのころ夫は転職活動を始めていた

拘束時間の割に給料が安すぎるのと
前職の経験を生かせる仕事に就きたいと

この会社にいたら娘を育てられない

それが転職理由

 

 

正直どうでもよかった

 


いちおう普段は
献身的な妻を演じてるけど

 

もう夫のことは
ATMとしか見てなかったので

 

「金さえ運んでくれたら」

 

の気持ちしか無かった

 


しかし
この転職は良い意味で私を裏切った

 

 

転職活動中の「つなぎ」で行った
世界的大企業での派遣のお仕事

そこで夫は派遣に見合わない活躍を見せ

 

派遣にもかかわらず
社員が一目置く存在になった

 


それが上層部まで届き

 

夫は派遣先の部署が管轄する子会社の
管理職として就職することを打診された

というか夫に言わせると

 

「無理やり就職させられた」だそうだ

 

 

しかしその子会社はIT会社で
とんでもない激務らしく

 

就職を打診された夫は

 

「母子家庭になると思ってくれ。
 それでもいいなら就職する」

 

と言ってきた
 

 

私は「大丈夫だよ」と献身的な妻を演じた

 

今と変わらないだろうと思ったから
 

 

だけど夫の就職後
夫の言葉の意味を知った

 


今までとはレベルが違った

 

 

就職後の夫の激務は尋常じゃなかった

 


早朝に家を出て帰宅は終電かタクシー
土日もほぼ仕事で「会社に住んでる」状態

たまに家にいても
会社携帯は頻繁に鳴り続け
タブレット片手に難しい話を連発

 


まさに「24時間戦えますか」状態

 


さらに夫は特別なスキルがあったので

 

国内だけじゃなく
海外子会社への出張も頻繁にあり

 

あっという間にパスポートのページが埋まった

 

 

そんな夫の激務の対価として
給料はとんでもなく増えた

 


だけどさすがに
本当に大丈夫かって心配になるレベル

「勝ち組の実態ってこうなんだ…」

 

今までとの違いに驚くばかり

 


お金があるから幸せとは限らないって
こういうことを言うんだろうな

 

 

いくら愛してないとはいえ
さすがに夫の身体が心配になったけど

 

それは「ATM」の心配

 


献身的な妻を演じつつ

 

心は全く夫に向いてなかった

 


むしろ夫の激務のおかげで
バレる心配なく彼に会いに行けた

それに
再婚前に思い描いてた裕福な生活

私は完全に舞い上がった

 

 

 

 

いきなり私は
「勝ち組の妻」になったんだ

 

 

 


今まで我慢してたことがウソのよう

子供たちにもお金をかけられるし
買物は何の気兼ねも無くできる

 


それに何より

 

彼との時間にお金を使える

 


そのたびに嬉しそうな彼の顔を見て

 

私は二重に幸せな気持ちを味わえた

 

 

 

 

私は自由とお金を手に入れた

 

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