PFASとは何か? 科学的な基礎知識

PFAS(Per- and Polyfluoroalkyl Substances、有機フッ素化合物)は、炭素とフッ素が強固に結びついた構造を持ち、熱や化学物質、摩耗に強い性質を持っています。この特性が評価され、以下のような製品に広く使われてきました。

  • フライパンなどのノンスティック加工(テフロン)

  • 防水・防汚の衣類・アウトドア製品

  • 消火剤(特に泡消火剤)

  • 半導体や自動車部品の製造プロセス

しかしこの“優秀な化学物質”は、同時に**「環境中でほとんど分解されない」=永遠の化学物質(Forever Chemicals)**と呼ばれます。自然界に一度放出されると、土壌や水系に長期間とどまり、人間や動物の体内にも蓄積されてしまうのです。


健康への影響は? 国際機関の警告

PFASの中でも特に問題視されているのが、**PFOA(パーフルオロオクタン酸)PFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)**という物質。世界保健機関(WHO)傘下のIARC(国際がん研究機関)は、

  • PFOA:ヒトに対して発がん性がある(Group 1)

  • PFOS:おそらく発がん性がある(Group 2B)

と分類しています。

さらに、PFASは次のような健康リスクと関連が指摘されています:

  • 腎臓がん、精巣がん

  • 甲状腺機能異常

  • 免疫系の低下(ワクチンへの反応低下など)

  • 妊娠中の胎児への影響(低体重出産、早産)

現時点では確定的な因果関係がすべて解明されているわけではありませんが、「予防原則」に立って規制すべきだという流れが、欧州や米国を中心に進んでいます。


日本の現状:指針値と汚染実態

神戸新聞の記事によると、環境省が2023年度に実施した全国調査では、兵庫県を含む39都道府県のうち22府県で、水道や地下水など242地点が国の暫定指針値を超えていたとのこと。

この「暫定指針値」とは:

PFOAとPFOSの合計で1リットルあたり50ナノグラム(ng)以下

 

という数値。アメリカの最新指針(米環境保護庁:EPA)は、この数値よりはるかに厳しく、PFOAは0.004ng/Lと、なんと日本の12,500分の1という超低濃度のリミットを設定しています(2023年時点)。

大阪府摂津市では、この日本の指針値の520倍にあたる26,000ng/LのPFASが検出されました。つまり、もし米国の基準で判断するならば、650万倍もの汚染ということになります。


なぜ排出源が分からないのか?

社説では、汚染源の特定が進まない現状に対しても強く警鐘を鳴らしていました。

PFASの排出源として挙げられるのは:

  • 化学工場(製造・加工)

  • 消火訓練施設(泡消火剤の使用)

  • 米軍基地など(特に沖縄では注目されている)

ところが、日本ではこうした施設に対する調査権限や情報開示の体制が十分でないため、「原因不明」=調査未着手の状態が続いているケースも多いのです。


私たちにできる小さなアクション

「じゃあどうすればいいの?」という問いに対して、すぐにできる完璧な答えはないかもしれません。でも、以下のような小さなアクションは可能です。

  • 自治体が公開している水質検査結果を確認する

  • 「PFASフリー」の製品を意識して選ぶ

  • 汚染が深刻な地域への支援や署名活動に参加する

  • SNSやブログなどで関心を共有する

そして何より大切なのは、「知ることをやめない」こと。問題が“見えにくい”からこそ、見ようとする意志が求められている気がします。


終わりに:安心して水が飲める日常を

「蛇口をひねれば安全な水が出る」──そんな当たり前のような日常が、実はとても脆いバランスの上に成り立っていることを、今回の社説は教えてくれました。

PFASは目に見えない。でも、だからこそ見ようとしなければ、永遠に気づけない。

一人ひとりの関心が、社会の流れを少しずつ変えていくことを信じて、このnoteを書きました。読んでくださって、ありがとうございます。
また、以前にも解説の記事を書いてますのでそちらも一読お願いします。

 

 


※参考:

  • 神戸新聞社説(2025年5月19日)「PFAS汚染/排出元の調査確認を急げ」

  • WHO/IARC Monographs

  • 環境省:PFAS関連資料

  • 米国EPA(環境保護庁)PFAS対策情報