近所の金木犀が今年はまだ咲かない。


いや、もう咲かないのかも。


この季節になるとカーブの手前から甘い香りが漂っていたのに。


僕はその風景がとても好きだった。


金木犀の香りが記憶の中枢にあるから。


就職してとある企業の講習に学んだ事。

香水の香りとボトルの形状は記憶を支配する。


なるほど、そうだ。おかげで今になって意味がわかった。


ある秋に金木犀の枝が切られた。

咲いた花は雨に濡れたアスファルトに潰れてしまっていた。


枝切りさえしなきゃ秋は、そこにあったのに。


なんてね。