野口五郎岳から晴嵐荘への下山はこれまでに覚えたことのない険路だった。
すっ転ぶ寸前に宿に着くとすぐに温泉に浸かった。
熱めの湯だけれど気持ちはすっきりとした。
夕食時のテーブルで仲良くなった二人組がいてビールを交わした。
晴嵐荘はネーミングのようにしょっちゅう嵐に見舞われているから、その年の路面状況を事前に確認しなきゃいけない。
高瀬ダムに下りるルートの橋が崩れてしまい利用できなくなった年があり、登山客はまた崩れかけた急な坂道を折り返して野口五郎小屋へと戻ったとか。
情報の取り方にさらに現地の状況を確かめなきゃダメですよね。
そんな話をした。
きれいな川沿いを下山していくと、木造の橋が何箇所も簡易的に掛け直されていた。
歩きやすい。
けれどこのダム工事は失敗作で、山を細くさせていて何十台ものダンプカーが土砂を運びだしている。
晴嵐荘のオーナーが朝の見送りのときに、グループがあらぬ方向へ向かっていた。
そっちはダメだ。
引き返せと呼び止めていた。
伊藤新道だと帰宅した地図で知った。