夜通し続いた雨はあがり強風だけが暴れていた。
問題は行動制限が解除されるか否かだ。
解除されなければまたこの山荘に留まる事になる。

朝食を食べ終わり暫くすると若旦那が行動制限が解除されたと嬉しそうに伝えた。

ザックを下駄箱の脇に置いて外に出た。

右手の遠くに槍ヶ岳が見えていた。
雲ノ平からもよく見えているだろう。

山荘から頂上まではそれほど離れてはいない。
ただ、強風が遠くにさせていた。
ハイマツ帯を過ぎると立っているだけでもやっとで
ウェアの隙間からどんどん風が入り込み身体を浮かせようとしてくる。

カールに飛ばされたら元も子もないので諦めて山荘に戻った。

若旦那がまた熱い茶を淹れてくれ、もうすぐで風も止むとは思いますが。と言った。

僕らは最終日に登ると計画を変更していたので、また宿泊の予約を入れて山荘を後にした。

若旦那が名言していたように登山道からは雨水はすべて引いていた。

太郎平小屋で水を汲み、薬師沢小屋へ続く木道を進み赤い橋を渡り梯子を下りると、いよいよ岩ゴロの二時間登りっぱなしの核心部に入った。

着いたらビールを飲む。
それだけを合言葉に登り詰めて雲ノ平の端っこの木道に着いた。


山荘は見えているし焦る時間でもないのでゆっくりと歩き、到着するとテラスでビールを飲んだ。


風が抜けてゆく。
その度にチングルマや池塘が眠る赤ん坊の胸のように揺れている。

無駄なものなんてひとつもない。

だとするなら自分たちもそうなんだ。

そう感じられただけでここに来た意味はあった。

翌日は祖父岳から雲ノ平を離れて、水晶岳と鷲羽岳を経由して三俣山荘で昼食をする。

それから黒部五郎岳小屋に向かう。