山荘のなかは俄かに騒がしくなっていた。
穂先から御来光を眺める人が出発しているようだ。

朝方になると気温が下がり、僕らはダウンを羽織って朝飯を待っていた。


上高地へ下るので今までのようなハードな行程は無いだろうけど、歩行時間はたっぷりある。
腹ごしらえしとかなきゃ。

仕度を終えるとすぐに下山に掛かった。
陽射しはたっぷりあるのにひんやりとしている。


雪渓を三箇所渡り岩稜を下りて行く。

すると、槍ヶ岳を開山した播隆上人が修行したとされる窟があった。


新田次郎の槍ヶ岳開山によると播隆上人はもとは農民であり一揆の際に誤って妻を殺してしまう。
最後は足に凍傷を負いながらも鎖を設けていき、亡くなってしまう。

そんな話しだったかな!?

いや、禅問答があったはず。
帰宅したら読み返そう。


雷鳥平から槍沢ロッヂまではまだ山道を歩いているようだった。短なピッチでアップダウンが現れ意外に安心できない。

相棒がブロ友さんは居たの?と質問をした。

いいや、昨日も今日も探したけど居なかった。忙しくしている山荘のスタッフに質問するのは憚れるし会える時には会えるだろう?

そうだな、そんなもんだ。

こんど槍に行くなら新穂高温泉からにしよう。彼は実家の小屋を継いでいるはず。

新穂高なら常宿があるし良いじゃん。

おー、だな。また槍ヶ岳の四季を放映を観ようぜ。

その地域では延々と槍ヶ岳の番組をリピート放映をしているチャンネルがあって、しかも天気予報では当たり前のように峰々のようすを伝えている。

宿の親父さんは若い頃に日帰りで高天ヶ原まで行ってたってな。

そう、水汲みにな。

すげぇよな。山登りしてるといろいろな出会いがあるよな。

そんな浮世離れした会話をしていると、槍沢ロッヂに着いた。


このルートの小屋はどこも綺麗で驚いた。
ロッヂも木の匂いがして、冷たい水が蛇口から細まる事なく零れている。

ヤバイの見つけちゃったよ。

ほら。


相棒に渡すと、これはヤバイ。
和梨ジュースを凍らせたシャリシャリのシャーベットじゃん🍨

鶯やカッコウの合唱を聴きながら、ベンチに座ってシャーベットを揉み解して吸い込んだ。
あっさりとした甘さがとても美味しい。

梓川が併走するようになると道はなだらかになる。
もうすぐ横尾山荘が見えるだろう。


意外や意外、登山者で混み合っているかと思ったら空いている。
徳沢園は混雑しているだろうし、昼食はここでとることにした。


またラーメン。
山小屋ラーメンにはまってしまった。
横尾山荘のも美味い。

横尾山荘を後にすると梓川にショベルカーが入り土砂を汲み上げていた。
いつも梓川は工事車両が働いているイメージが。

どうせなら上高地まで平らな道にしてくれたらいいのにな。
時々いじわるぽく現れる坂道に相棒がぼやいた。

徳沢園はやはり混んでいた。


お腹はいっぱいだったからコーラを乾杯した。

相変わらずセンスの良いインテリア。


登山靴を脱いでピカピカ💡スニーカーに履き替えた。
もうこの先はスニーカーが歩きやすいだろう。


表に出るとグループのリーダーが居た。

おや、どこかで見た顔だな。スニーカーはマイケルジャクソンかい。

もう二日も前から顔合わせしてますよ。苦笑いしながら応えて、泊まりですか?と聞いた。

うん。ご高齢の方もいらっしゃるからさ。骨休めもなきゃな。

そのスニーカーはどこで売ってる?

欲しいんですか?

うん。

雑貨屋です。

じゃあと手を振ると、またな。
とリーダーが手を振った。


もうすぐ旅が終わる。

小梨平キャンプ場を通過してしまえばゴールの河童橋
が待っている。

はじまりの歌 口ずさんで
止まらずゆこう
見上げた空 風にのせて
ゆけるとこまで



ゆけるとこまでゆけた

相棒と握手を交わしありがとうと言った。


追伸

ブロ友は実家の小屋をやはり継いでいた。
こじんまりとした食堂で素敵なスタッフたちとにこやかに笑って、かき氷を食べていた。