燕岳に向かうのは7年ぶり。

8月のその日はそぼ降る雨にも関わらずたくさんの登山者が居た。

北アルプスが初めてであったし、合戦小屋に着く直前には雲が切れてきて、テンションはマックス状態で三大急登を苦とも思わなかった。

燕山荘にザックを下ろすと外のベンチに足を伸ばして生ビールを乾杯しながら峰々を見上げたり、山荘の辺りを散策した。

相棒がこの先にはどんな景色が広がっているのだろうな。と大天井岳へ延びる表銀座縦走コースの入り口に立って言った。

その先の喜作新道と東鎌尾根を経由して槍ヶ岳に至る道のりを僕らが知る由もなかった。

その翌年から何故か僕らは裏銀座ばかりを歩き続けてきた。

そして昨夏。野口五郎岳と常念岳から燕岳方面と槍ヶ岳を眺めていると、相棒の一言を思い出した。

来年さぁ、表銀座を歩こうか。

え!マジ?行こうぜ。ってかコンディションは大丈夫かよ。

なんとかなるだろ。
と返事をしたものの右腕の腕力と握力は相変わらずほとんど戻っていないし、そのせいで岩綾帯やハシゴについてはとんと自信もないし、高所恐怖症だって見え隠れしてくる始末。

なんとかなるだろう。
なんとかするのだから。


通年では梅雨の末期のはずが桁外れの早さで梅雨明けをして、しかも連休が重なり登山者の人数も前回以上の賑わいぶりだ。

始発便で来れたから良いものの、後発のバスが次々と発着する様子を想像するとちょっと恐ろしくなった。

バスを降りシューズの紐を調整していると茶色の財布が落ちていた。おそらく同乗客の落し物だろう。

拾い上げ運転手さんに預けると、バスに向かって走っていく女の子が見えた。

あの子の財布かな。

すると、ほらあの黄色いザックの人が届けてくれたんだ。とこっちを指差していた。

女の子は何度も礼を言うものだから、照れ臭くなって存分に楽しんできなよ。と言って僕らは歩き始めた。

第3ベンチを通過した辺りで、ふーっと相棒が息を吹いた。こんなにきつかったっけ?

風が通らない蒸し暑い樹林帯は、揚げ物中の台所のようだ。

僕らにしては前常念を通過するコースが一番しんどいと話してきたけど、どの登りも辛い。


やっと出てきた看板。

10分前の看板には🍉の絵柄は無いけれど、こちらには描かれているんだね。
小さな発見が嬉しいのは山歩きならではか。


空席に潜り込み🍉タイム。
世界一高価なスイカだけど、これがまた美味い。
貪りながら噛り付きふと周りを見ると長蛇の列が出来ていて、厨房から15分待ちの声が飛んできた。


となると、あまりノンビリと座っても居られないだろう。広いとは言えない尾根を大勢の人たちと歩くなんて、高尾山みたいだ。

カタカタカタカタ
箱詰めのスイカを荷揚げるリフトの音も忙しなく鳴っている。

喉を潤すとすぐに出発した。