行者小屋テント場を後にして小径に入るのは僕らだけだった。
多くの人は直接に赤岳へ向かったり、テントを張る準備をしていた。
そんな光景にはひとつの秩序に沿っているようでなんとなく微笑ましくなる。

飾りっ気がなく見栄えのない、ただ傾斜を強めるだけの道を進むとコルに出た。
置かれたザックの持ち主は、右手に聳える阿弥陀岳に向かっているようだ。

僕らも身軽になって一息いれて上を眺めた。
梯子がいくつか立っているのが見えて、その先はどうなっているかを観察をした。
登る人は手足でしがみつくようにしていることから気を引き締めなければならないところまでは判断ができた。

老年の方が隣に来られたので話をすると、無理だと判断をして途中で引き返したのだと言う。

俺に登れるのかな。上には鎖もあるし。
急に弱気が目覚めてしまう。

首を傷めた夜。真っ暗な部屋の中で、立ち上がろうとしても下半身が麻痺をして起き上がれなかった。這ってテーブルの上の電話を取り、救急車を呼んだ。

レントゲン室から通された診察室の机には、雪山の頂に立つ男性の写真が飾られてた。

その山が赤岳だった。
もし今後も山歩きが出来るのなら、いつかこの山塊に行きたいと思ってきた。

サコッシュが上げた足に当たらないように位置を調節をして、相棒に行こうかと声をかけた。

朱色の鉄梯子を登る。

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ぱらぱらと降ってきた小石が登山靴に当たり弾かれて、誰も居ない斜面を勢いよく落ちていく。相棒が、間を取ろうと言いその場に止まった。

その間、頂上への行動をイメージをする。
鎖の位置と手がかり足がかり、など。
あそこはこうして、そのさきは…

もし、その山を100%登れるとしたら僕は行かない。登れるか登れないか分からないから様々なことをイメージしながら登る。
登山の楽しみはイメージすることだから。
竹内さんが講演会で話してたっけ。

山頂。


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誰かが奉納した三角錐型の水晶。

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手に取って山行中の安全を祈願をした。