小屋の裏手は雑木林になっていて、住人の声でも響くかと思っていたのだが、かすかに聞こえて来たのは食器が重なる音だった。
時計を見ると5時で、朝食まで2時間もある。
横になって天井の太い梁をながめながら、つくづく安らげる場所だと思った。朝早い小屋ならあと30分もすれば食堂がいっぱいになり、やがて皆んなが散り散りに旅立っていく。刹那とするならそうだけど、潔いと思うことだって出来る。
ただここの小屋はまた訪れようと相棒と決めていた。小屋に染み付いたオーナーの人柄がそうさせたのだった。

朝食も素晴らしかった。
焼き立てのパンに野菜たっぷりのスープなど。
お代わりできるものはまた貪欲に食べた。

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挨拶をして車に乗るとオーナー夫婦が玄関まで出てくると、それはもう素敵な笑顔で手を振り、鐘を響かせて見送ってくれた。

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あぁ、そうなんだ。と談話室に貼られた船窪小屋の記事や手ぬぐいを思い出した。

船窪小屋も出発の時は老夫婦が見送りに出てくれて、鐘を打ち鳴らす日課があるんだった。

九十九折の坂道を下ると八ヶ岳のビューポイントがあって何の気なしに眺めると昨日よりも雪解けが進んでいた。

へぇ、一日でこんなに違うなんてね。相棒がシャッターを押しながら、ほらあそこもだよと指を指した。

遅い春は雪解けの冷たい水を吸い上げて、もうすぐ湿原と山頂に暖かな息吹を運ぶだろう。

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