鳶はとても視力が高いらしい。
空中で弧を描きながら獲物を探し、背後から襲い掛かる。
味の好みは脂っぽいもの。
だから鳶は油揚げを狙う。
最近の鳶は湘南海岸や鎌倉に出没して、ハンバーガーを掻っ攫っていく。
そんなニュースを伝えていた。

4月15日
相棒と鎌倉アルプスを歩いた。
僕は二度目の縦走で、相棒は初だった。

北鎌倉駅から登山口の建長寺に向かう。
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このところの週末にしては晴れていて、暖かな一日になりそうだった。
境内の桜も散り、土に化粧を施していた。
その代わりに柔らかな新緑が両手を広げ迎えてくれているようだった。
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竹林にはロープが張られていて注意書きがぶら下がっている。
たけのこを取らないでください。

へぇ~と辺りを見渡すとにょきにょきと頭をだしている。
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茶屋で筍料理が食えるって。

どんな?

一軒は天麩羅、もう一軒はさしみだって。

昼飯は持参して来なかった。下山してから小町通りで食べればいいと決めていたからだ。
行動食にはちみつ梅、チョコ、ワッフルを用意しただけのハイキングモード装備だった。

富士見台に続く長い階段を行くと高尾山より沢山の天狗がいた。
前回の記憶が定かじゃなくなっていた。
天狗はいたっけ。
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富士見台まで上り詰めても、春霞のせいで海さえぼんやりと見えているだけ。
天候に恵まれるとこんな風景らしい。
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さらに階段を登り見晴らし台へ。
ここから先、道がややわかり辛くなる。
道標はあることにはあるが、あたり一帯がハイキングコースに指定されていて、見過ごすと住宅地に出たりする。
あくまでも天園を目指さなきゃいけない。
はじめて歩いたときの感想だ。

ハイキングとは言え山道は山道で、ロープ場があったり、滑りやすい岩を歩かなきゃいけない。
かと言えば稜線がしっかりあったり、ミニ八ヶ岳ぽい苔ゾーンもあったり。
アルプスを名乗るだけに、場を楽しませてくれている。
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相棒にそんな話をすると、おなじ感想を抱いたようだ。

一人じゃ見落とす風景も、相棒と一緒ならすべて見ている気がする。

覚えのある景色が現れた。
鎌倉アルプスの最高点159m、太平山は眼下にあった。
山頂に下りて行くなんてこのコースくらいだと思った。

いや~このコースいいな、そこそこ歩くしさ。
お菓子休憩しよう、あの辺で。
真っ平らな山頂の中央を相棒が指差した。
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再訪する前に、ランドネを読み直していた。
太平山の鳶にご注意と書かれていた。

上空を眺めると鳶が一羽、円を描いていた。

いや、木陰がいいさ。
ニュースとランドネ記事を話した。

木陰は常連さんが占め弁当を広げていて、ワッフルよりもはるかに旨そうな料理をつまんでいて、休む場所は無かった。

中央の石に腰掛けアイスコーヒーを飲みながら、ワッフルを齧った。

ばさ、と風が耳を圧迫した。

あー!と相棒が叫んだ。

僕はびっくりしてコーヒーをこぼした。

三分の一になったワッフルを鳶が奪って行ったそうだ。

怪我はないと言っていたが、親指に針を刺したような痕があった。軟膏とバンドエイドで手当てをしてから出発した。

ゴルフ場に沿って歩くと、茶屋が釜の狼煙を上げていた。
筍の天麩羅と豚汁を頼んで、段ボールに入れられた仔犬を撫でた。

豚汁はあっさりとしてだしが効いていた。
天麩羅は揚げたてを席に運んでもらった。
ほくほくとした歯触りと季節が滋味深かった。
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瑞泉寺に下りて八幡宮まで歩くと、白無垢姿のお嫁さんがいた。

とにかく空腹で小町通りの洋食屋に入った。
ランチプレートとパスタセットを注文して半分ずつに分けた。
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開けた窓からは春の風が抜けていく。
なかなか美味しい料理だった。

食事後に鎌倉散策に出掛けた。
鎌倉野菜の市場で色とりどりの野菜をたくさん買った。八幡宮前の中央道を眺め、また小町通りに戻った。

朝から良く歩いたな。

だろう、このコースは良く歩くんだ。

空を見上げると鳶が円を描いていた。
買ったばかりのシュークリームをザックに詰め、
帰路についた。