8月13日(火曜)
早朝5時40分
月はまだ寝ぼけ眼をこすっていた。
心配そうな雲もなく予報に期待が持てそうだ。
靴もからからに乾いてた。
帰宅して買い物リスト入りする可能性はあるが。
テラスには山形県パーティのご一行がストレッチをしていた。
その姿に魅せられ勉強とイメージトレーニングを繰り返してきた
乾杯のお礼を言ってなかったのを思い出し、簡単な挨拶に感謝を交えた。
女性が、こそっと耳打ちした。
大丈夫ですよ、リーダーのフォローはちゃんとしますから。
ふと可笑しくなった。
お気をつけて。またどこかの山で。
おじぎをすると小屋の裏手に回り、分岐を薬師沢方面にとった。
昨日、太郎山を下りる途中に下見を兼ねてこの木道を歩いていた。
池塘があちらこちらに穴を開け、チングルマの綿毛が揺れていた。
まだ歩き出したばかりなのに、太郎平小屋は小人の家。
木道の先は急下降がはじまった。
ここがからは知らない道になる。
苦労を要としたのだろう。
もっと人が多いかと思ってたよ。
高尾みたいにさ。
はじめて高尾に登った時のことを茶化すように持ち出した。
6号を登りきる手前のベンチに真夏の陽ざしにやられて座り込んだのは、
お前だろ。
俺が腰掛けてからすぐにポカリを一気飲みしたのは誰だよ。
生温くなって薬品くささしかない味を思い出した。
りんりんりんと小気味よく熊鈴が鳴っている。
やがて鈴音は川音にかき消された。
昨日とはいわず今までの雨で水かさが増しているのだろうか。
はたまた黒部の源流は常に激しい営みにあるのか図り知れなかった。
小屋主に出かけに尋ねてみたら徒渉に差し支えはないが、注意を怠らないようにと気を引き締めさせられた。
ざぁざぁは近くに立つとごうごうと響いていた。
透明な川水はごろっとした岩や石にぶつかると白波を立たせ流れていく。
竹を半分に割り結びあわせた手作りの橋は靴底を跳ね返してきて
けれどもどこかでは楽しむ自分がいる。
短な橋を含め3箇所を渡った。
豊富な水源は岩肌からも伝って涼を誘ってくる。
小屋の洗面台が混雑しててそのままにしてた顔を洗った。
あまりにも長閑な道が続くので見落としてしまうところだった。
カベッケが原
黒部の山賊ではカッパが盆踊りをしたり、白たぬきがでたり、
へぇーここがそうか。相棒がぐるりとあたりを見回す。
風がそよそよと草を撫でつける今の景色は、不気味さは微塵もない。
けれどその昔は、と想像するとまんざら逸話じゃないように想てならない。
自分のイラストのほうが怪異だが。
カベッケからすぐに薬師沢小屋に着いた。
はじめての短い休憩を入れた。
なにせこの日はロングコースになる。
いつものようにのんびりはしていられない。









