昼休憩となりデスクにばら撒いていた書類を端のほうに寄せた。
部署や仕事内容も変わりほぼ1カ月。
なかなか引継ぎがままならないところもあるが、いよいよ来週からは新しい部署に馴染まなくてはならない。
ふぅ~
やるしかない、か。
◯◯君
社長が声をかけている。
はい
マズイ、何かやったか。
近寄ると、食事の誘いだった。
メシでもどうだい。
あのハンビャーグ屋にでも。
まだ覚えていたのか。
ハンバーグをハンビャーグと言い間違えた一件だ。
並んでエレベーターに乗り、一階まで下りた。
一歩後ろに控えさせないとこがまた人徳だ。
店は相変わらず盛況な様子で、先客の後に付いた。
デミグラスソースやらケチャップやらハンビャーグのタネを焼く匂いもおなじく漂ってくる。
社長が食事に誘うには、なんらかの意図があってのことだ。
と、自分は思っている。
だから膝を付き合わせる店を選ぶクセがあるのだろうと。
そんなところもスマートな気遣いだと思う。
本日のランチは、ミックスフライ定食だった。
何にする?
最近になりまた体重がキレキレになっているのでハイカロリーな食事がいいのでは、と、頭の片隅の線引きに沿ってメニューを選ぶ。
外の気温とは反すると思ったが、ビーフシチュー定食にした。
今度はベーフシチューとは言わなかった。
社長も同じものにした。
来週からのこと、付随すること、そんな打ち合わせを交ぜた話が進む。
料理が運ばれると話は中断した。
牛肉は柔らかくスプーンで切れるくらいで味は強め。
ごはんがお代わりできそうだ。
ところでね
社長が切り出した。
うちの娘が君と山に行きたがっているんだ。
はぁ?
上司に向ける言葉ではないが、突拍子もなくて、そう返すしか出来なかった。
社長の娘さんは確か25、6歳だったか。
まえに家にお邪魔した時に顔を合わせた。
いや、急な話ですまない。
山と言ってもいろいろあるので。
僕は山に詳しく無いので、なんとも言えないが…なんでも山歩きをしたいそうなんだ。
お嬢さんのキャリアはどのくらいなのでしょう?
高い山に行ったことがあるとか。
知る限りでは、そんな話題はのぼったことはないかな。
本人は、八王子の山に行きたいと。
高尾山ですね。
そこだ、高尾山だ。
高尾山なんか行ったこともない、なんて冗談も言えず。
いままでの経験から山好き同士は打ち解けるケースは多い。
かといって、社長令嬢と二人で登るのは心苦しい。
はた、と。
浮かんだのがオフ会をやろうと話をしていたのだった。
それならいつか分からないですが、オフ会の話がありますが。
と答えた。
それからどのくらい歩かれるかを確認してもらうことを添えた。
済まないねぇ、無理しなくて構わないからね。
娘にはそう伝えておくよ。
恐縮するように言われるのでなんだか申し訳ない気持ちになった。
社長も娘さんを思うひとりの父親なのだ。
家庭人でもある一面が妙に可愛らしく映る。
午後からの仕事は集中力が尽きてしまい手につかなかった。
午後3時
初夏のような陽射しが降り注ぐ日本橋さくら通り。
昼間の会話が現実のものとは思えなくなった。
狐につままれたか。
はたまた陽気につられ午睡でもしてしまっていたのか。
確かなことはただひとつ。
蕾がはち切れんばかりに膨らんでいた。
後に知ったが、東京もさくらが開花した。
春が来たのだ。
部署や仕事内容も変わりほぼ1カ月。
なかなか引継ぎがままならないところもあるが、いよいよ来週からは新しい部署に馴染まなくてはならない。
ふぅ~
やるしかない、か。
◯◯君
社長が声をかけている。
はい
マズイ、何かやったか。
近寄ると、食事の誘いだった。
メシでもどうだい。
あのハンビャーグ屋にでも。
まだ覚えていたのか。
ハンバーグをハンビャーグと言い間違えた一件だ。
並んでエレベーターに乗り、一階まで下りた。
一歩後ろに控えさせないとこがまた人徳だ。
店は相変わらず盛況な様子で、先客の後に付いた。
デミグラスソースやらケチャップやらハンビャーグのタネを焼く匂いもおなじく漂ってくる。
社長が食事に誘うには、なんらかの意図があってのことだ。
と、自分は思っている。
だから膝を付き合わせる店を選ぶクセがあるのだろうと。
そんなところもスマートな気遣いだと思う。
本日のランチは、ミックスフライ定食だった。
何にする?
最近になりまた体重がキレキレになっているのでハイカロリーな食事がいいのでは、と、頭の片隅の線引きに沿ってメニューを選ぶ。
外の気温とは反すると思ったが、ビーフシチュー定食にした。
今度はベーフシチューとは言わなかった。
社長も同じものにした。
来週からのこと、付随すること、そんな打ち合わせを交ぜた話が進む。
料理が運ばれると話は中断した。
牛肉は柔らかくスプーンで切れるくらいで味は強め。
ごはんがお代わりできそうだ。
ところでね
社長が切り出した。
うちの娘が君と山に行きたがっているんだ。
はぁ?
上司に向ける言葉ではないが、突拍子もなくて、そう返すしか出来なかった。
社長の娘さんは確か25、6歳だったか。
まえに家にお邪魔した時に顔を合わせた。
いや、急な話ですまない。
山と言ってもいろいろあるので。
僕は山に詳しく無いので、なんとも言えないが…なんでも山歩きをしたいそうなんだ。
お嬢さんのキャリアはどのくらいなのでしょう?
高い山に行ったことがあるとか。
知る限りでは、そんな話題はのぼったことはないかな。
本人は、八王子の山に行きたいと。
高尾山ですね。
そこだ、高尾山だ。
高尾山なんか行ったこともない、なんて冗談も言えず。
いままでの経験から山好き同士は打ち解けるケースは多い。
かといって、社長令嬢と二人で登るのは心苦しい。
はた、と。
浮かんだのがオフ会をやろうと話をしていたのだった。
それならいつか分からないですが、オフ会の話がありますが。
と答えた。
それからどのくらい歩かれるかを確認してもらうことを添えた。
済まないねぇ、無理しなくて構わないからね。
娘にはそう伝えておくよ。
恐縮するように言われるのでなんだか申し訳ない気持ちになった。
社長も娘さんを思うひとりの父親なのだ。
家庭人でもある一面が妙に可愛らしく映る。
午後からの仕事は集中力が尽きてしまい手につかなかった。
午後3時
初夏のような陽射しが降り注ぐ日本橋さくら通り。
昼間の会話が現実のものとは思えなくなった。
狐につままれたか。
はたまた陽気につられ午睡でもしてしまっていたのか。
確かなことはただひとつ。
蕾がはち切れんばかりに膨らんでいた。
後に知ったが、東京もさくらが開花した。
春が来たのだ。