日没が18時まで待ちきれない東京。
薄青い空が広がる昼時に社長から声をかけられランチを共にした。
洋食が美味しい店で扉を開けるとソースやらケチャップだのの匂いがした。
普段の立ち食い蕎麦の匂いとは違うものだ。
なににする?
メニューを渡され言われた。
A4の紙に書かれた品書きではイメージが結ばれず、店内を見渡した。
ハンバーグが人気みたいだ。
ハンビャーグにします。
いかん、緊張しているのでもないのにミスってしまった。
社長はふっと軽い笑みを浮かすと、じゃあ僕もそれにしよう。
と、言った。
店員さんに手を挙げ、メニューを指さしながらハンビャーグを、とオーダーした。
食えない人物、か。
ところで、体調はどうなんだい?
医師の診断ではまだ6時間しか働けないそうじゃないか。
正直に言った。
そのようです。
社としては本当はそれでは困るんだよ。
君は定時まで居るだろう。
頭の中でいくつか言葉が走る。
パソコンだって無理をして使うなと言われている。
いくら休暇扱いとはいえ、平日に休みをもらい山にも行かせてもらっている。
なのにひとり一時間も早く退社するわけには行かない。
社長は答えを待たなかった。
無理しなくていいんだ。
長く勤務して貰っているんだから。
辛い時はそう伝えて早退すめばいい。
はい
とだけ答えた。
帰宅時にリハビリに立ち寄った。
どうですか、調子は?
療法士さんに聞かれ、まだ右腕が痺れててと伝えた。
また赤岳に行くんですよ。
肩甲骨あたりの筋をグイっとやられうめき声をあげそうな時に声が聞こえた。
ほんとはね、僕も〇〇(俺の名前)さんとどこかの山に行きたいんですけどね。
なかなか治せないから、そう言えないんですよ。
痛みを堪えて、ええ是非にぜったいに行きましょうと答えた。
この歌が日没した街を歩くと浮かんだ。
うちに帰ると相棒から電話があった。
今夜の晩飯なんだと思う?
ハンビャーグなんだよ。
あっ、間違えた。
ハンバーグだった。
笑ってしまうと今日一日も縁だったのかと思ふ。